世界的な金融危機が、中国・深圳、東莞、広州などを含む世界最大の輸出加工基地、珠江デルタ地帯(珠三角地区)に進出する台湾企業(台商)にも影響を及ぼしている。従来型産業では11月以降の受注額がほぼ半減している状態で、電子業も欧米市場の落ち込みで受注減に見舞われている。珠三角台商協会のある幹部は、珠江デルタおよび長江デルタ地帯(江蘇省、上海市、浙江省などを含む)に進出する台湾・香港・中国の輸出加工企業は、来年春節(旧正月)以降に空前の撤退・倒産の波に襲われると予想している。29日付工商時報が報じた。
「かつてない急激な受注減」
広州台商協会の程豊原会長によると、自身が経営するカーテン工場では10月までは正常な受注額があったが、11月分から大幅に減少しており、来年1月までで5割前後減少しているという。同地の台湾企業の多くが同様の状況にあるようだ。
30年以上にわたり欧米向けにカーテンを生産輸出してきた程会長は、「受注がこれほど急激に減ったことはかつてない」と深刻さを指摘する。程会長は先ごろ、状況把握のため輸出先の米国を訪れた。やはり製品が売れないのは欧米の代理店が先行きを悲観して、在庫削減で対処しようとしていたためだった。
程会長が欧米の顧客から得た感触では、来年欧米市場の消費は下落する一方とみられ、「このまま受注減が進めば規模の大きい広州工場はたたむしかない」と最悪の事態を覚悟している。
東莞台商協会の林世銘副会長の経営する家具・照明器具メーカーでも、12月~1月分の受注額は半減している。「創業以来30年で初めての事態」と語る林副会長も、中国からの撤退を視野に入れている。
珠江デルタ地帯では、電子業界の台湾企業も同様の事態に直面しており、欧米市場での消費意欲の後退が受注に影響を及ぼしているとみられる。工商時報では、工場閉鎖、事業撤退を視野に入れるといった状況は、同地帯に進出する台湾企業全般に当てはまると指摘している。
「輸出税還付率を以前のレベルに」
工商時報はまた、最近の金融危機を受け、欧米をはじめアジア各国でも政府が金融機関に対し支援の手を差し伸べているが、欧米経済の影響を強く受ける台湾、香港、中国の輸出関連企業は、孤立無援の状況だと指摘する。
これまで中国の経済成長をけん引してきた労働集約・輸出型産業の企業は、中国政府の「国内産業水準の引き上げ」という旗印の下、輸出増値税還付率を引き下げられ、これに人民元の切り上げ、世界金融危機が加わってその競争力は依然とは比べものものにならないほど低下しているという。
輸出型企業の窮状を見て中国財政部国家税務総局は、輸出増値税の還付率を11月より引き上げると発表したが、同紙では「時期を失しており、上げ幅も小さすぎる」と指摘し、「以前と同水準に戻さなければ、輸出型産業の回復につなげることは難しい」と分析している。