彭淮南・中央銀行総裁は30日、一部のシンクタンクなどから「台湾の景気は来年には回復する」という見方が示されていることに対し、「そうした楽観的な人には敬服する」と語り、来年中の回復は難しいという認識を示唆した。中銀は同日、金融危機に伴う景気後退懸念への対応策として公定歩合を0.25ポイント引き下げ、利率を3%とした。過去1カ月半の下げ幅は0.625ポイントで、過去17年で最大となった。31日付蘋果日報などが報じた。
彭淮南中銀総裁(左)。海外の金融専門誌から3年連続で「A」評価を受けるなど、通貨政策の手腕には定評がある
(30日=中央社)
彭総裁は、「ここ数カ月の輸出、工業生産、消費および就業などの指標悪化は、経済活動の減退と景気後退リスクの高まりを示している」と語った上で、「8月の失業率上昇が重要な警戒シグナルだ。通常、大学生の卒業シーズンである7月がピークで、8月は下落するのが一般的なのに今年は上昇した。これは台湾経済が減退に向かう兆候だ」と指摘した。
彭総裁の発言からは、台湾の景気回復には時間がかかり、少なくともあと1年は厳しい状況が続くと考えていることがうかがえる。
物価は安定化を予想
中銀では、来年の台湾経済はプラス成長を維持するものの、成長率は今年を下回ると予想している。当面は国際金融情勢を見据えつつ、金融機関の流動性の安定維持を最大の課題として金利政策を遂行していく方針だ。
来年の台湾経済をマイナス成長と予測しているのは豪マッコーリー証券のみで、今年の経済成長率は2.8%、来年はマイナス2%としている。その他の外資系証券会社は、ほとんどが2~3%の予想だ。来年は物価が今年よりも安定し、インフレ圧力が緩和するという見方が多い。
来年中に2%まで引き下げも
30日は公定歩合と共に、担保付融資貸出利率と短期融通貸出利率も0.25ポイント引き下げ、それぞれ3.375%、5.25%とした。
利下げは10月に2回目で、それぞれ米国と中国の利下げ発表の直後に行っており、米中への追随姿勢が明確だ。市場では中銀は来年下半期まで段階的な利下げを行って、2%ラインまで引き下げる可能性もあるという観測が出ている。