4日行われた中台公式協議で、中国側代表の陳雲林・海峡両岸関係協会(海協会)会長は、次回協議を中国アモイで来年上半期に開催することを提案した。陳会長は「両岸(中台)が金融協力に関して協議を加速させるべき」との考えを示しており、次回は金融監督分野での協力覚書(MOU)の締結が最大の焦点となる。高孔廉・海基会副董事長は「金融MOU締結に対する双方の関心は高く、次回での締結の可能性は非常に高い」という見方を示した。
金融座談会に出席した陳雲林・海協会会長(左)と江丙坤・海基会董事長(右)。金融は次回の協議で、今回の直航開放同様の大きな前進がみられそうだ(5日=中央社)
台湾の「アセアン+3」加盟を提案
5日は、次回協議での金融MOU締結に向けた「ウォーミングアップ」として、中台の金融・工商界の代表者による座談会が行われた。座談会後、行政院金融監督管理委員会(金管会)の李紀珠副主任委員は「世界金融危機への対応が最大のテーマだった」と明らかにし、「台湾側は『東南アジア諸国連合(A
SEAN)
10+3(日中韓) 』の枠組みへの台湾の加入や大陸(中国)、香港、台湾の外貨準備高をもって共同基金を設立するといった提案を行った」と話した。ただ中国側から具体的な反応はなかったという。
座談会には、中台窓口トップのほか、台湾側は中央銀行外匯局の段金生局長、金管会の張明道銀行局長、黄天牧保険局長などが、中国側は中国工商銀行の楊凱生行長、中国銀行の李礼輝行長および外国為替、銀行、証券、保険業などの監督機関の主管も出席した。
座談会では、金融および経済交流の拡大に向け、▽域内銀行の中国における支店・子会社設置開放▽台湾の金融機関による中国の銀行への出資解禁▽中国の銀行による台湾拠点設置▽人民元決済システムの確立▽保険業の進出条件の緩和▽投資保障協定──などが話し合われたもようだ。
台湾側は、中国における事務所の支店昇格に関連して、人民元業務取り扱い条件である、「支店設置3年後」という規定を1~2年に短縮または完全になくすよう要望したとされる。
高孔廉・海基会副董事長によると、今回の来台中に中国銀行や工商銀行のトップも「台湾に傘下機関を設置したい」という強い希望を示しており、双方の高い関心の下、今後協議が加速するとみられる。また、李金管会副主任委員は、「金融MOU締結協議に向け、両岸の法律や株式市場などに関する各専門機関が連絡を取り合うための窓口を年内に設置する」と語った。
人民元決済システムの確立へ
次回の中台協議では金融監督に関するMOU締結以外に、中台間の通貨決済システムも重要な議題となるとみられる。金融関係者によると、現在中台間で通貨決済協定が結ばれていないため、台湾の銀行は直接中国の銀行から人民元を購入することができず、香港上海匯豊銀行(HSBC)など香港の銀行から購入している。このため中間手数料や運送コストが発生してレートが不利になり、地下銀行での両替が後を絶たない原因になっているという。
この関係者によると、中台間で決済システムが確立すれば、銀行の人民元買い入れコストが低減し、一般の人が1万人民元(約14万6,000円)を購入する場合、200台湾元(約600円)程度安くなる見込みだ。また1人民元から両替ができ、受け取る紙幣はすべて新札となるという。
保険業、「532」規制の緩和要求
また域内の損害保険、生命保険業界では次回の中台協議で、中台間の保険業MOU締結を議題に入れるよう強く主張している。
海基会の高副董事長は「今回は保険業のMOU締結については議題としない」と語っていたが、座談会には保険業界関係者も出席しており、▽域内業者が中国市場に参入する際の「532」規制(総資産50億米ドル、設立30年以上、中国に事務所を設置して2年以上)の条件緩和▽中国の保険業者の台湾での拠点設置▽保険会社の支店・子会社の相互設置──などが話し合われたとみられる。
幸福人寿の鄧文聡董事長によると、中台は保険監督協定を結んでいないが、既に多くの域内業者が中国に進出している。鄧董事長は「協定の締結により、現在台湾進出が不可能な大陸の保険会社に対しどのような規定を設けるかなど、さまざまな問題に対処してほしい」と語った。
投資協定も優先課題
さらに次回協議で台湾は、中国に進出する台湾企業の間で長らく望まれていた、中台間の「投資保障協定」締結も優先議題にしたい考えだ。経済部関係者によると、既に経済部は中国側に第一次案を提出済みで、▽政府による為替規制▽資産の没収▽戦争▽暴動など政治リスク──に対する保障のほか、域内企業と同等の扱いや最恵国待遇の保障、経済紛争が起きた場合の仲裁方法などについて盛り込んだという。