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陳雲林会長が帰国、訪台成果に好評価


ニュース 政治 作成日:2008年11月7日_記事番号:T00011446

陳雲林会長が帰国、訪台成果に好評価

 
 中国の対台湾窓口機関、海峡両岸関係協会(海協会)の陳雲林会長が7日午前10時、中華航空(チャイナエアライン)で北京に帰国した。5日間にわたる今回の訪台では、空運直航の大幅拡大や海運直航が正式に決まるなど経済交流では成果があったが、陳会長訪台に抗議する独立派の市民と警察の間で数十人に及ぶ流血の衝突が起きて中国に対する拒否反応の強さも浮き彫りになり、今後の対中交流の進め方に課題を投げ掛けた。
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桃園空港から帰国する陳雲林会長(中)。台湾で人々から受けた厚意に感謝の言葉を繰り返した
(7日=中央社)

 陳会長は出発前に円山大飯店(グランドホテル)で開かれた歓送会で、「(中台関係の)未来の道はまだ長く、さまざまな困難に遭うことも予想されるが、両会(台湾・海峡交流基金会と中国・海協会)は両岸同胞の共通の利益となることを行っていく」とあいさつし、今後も中台交流の拡大を推進していく考えを強調した。

 台湾側の江丙坤・海基会董事長も同様の考えで、今後両会および政府関係部門の接触をより頻繁にし、細部の協議に当たっては処長(局長)級の官僚の訪中を実現させる考えを示している。

協議の成果、支持が過半数

 今回の中台公式協議について中国時報が行ったアンケート(サンプル数:711)調査では、56%が協議の成果に支持を表明するなど、概ね好意的に受け止められているようだ。一方、「支持しない」は3分の1以下の16.8%にとどまった。

 また、「陳会長の訪問は台湾の発展にとってプラスかマイナスか」という質問では、49.9%が「プラス」と答えた一方、「マイナス」という回答は半分以下の22.0%だった。中国時報は国民党寄りで、実際よりも馬英九政権に好意的、野党に批判的な数値が出ることがあるが、アンケート結果からは、協議で決まった経済交流の拡大は、台湾にとってメリットが大きいと考えられていることが分かる。
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80年代以降で最悪の衝突

 一方、6日は独立派市民と警察官の流血の衝突が起き、けが人は蘋果日報によると80人、中国時報によると77人で、1980年代以降で最悪のものとなった。けが人のうち警察官は57人と約7割を占め、市民の14人を大幅に上回った。

 馬英九総統と陳会長の会談が夕方から予定されていたため多くの市民が抗議に集ったが、会談は急きょ午前11時からに変更された。肩すかしされた不満もあって、午後から中山南路の景福門付近で警察官との衝突が始まり、大勢がけがをした。

 群衆はさらに陳会長の宿泊ホテルである円山大飯店に向かい、ホテル付近や台北市立美術館近くの中山北路で抗議活動を展開。激高した一部の参加者が警察隊に火炎瓶を投げつける場面もあった。午後10時半以降、警察が放水車も使って3回にわたって強制排除を行い、混乱はようやく収束した。

 中国時報のアンケートでは、抗議デモへの「支持」が25.7%に対し、「不支持」は59.4%に上った。6日の抗議活動が警察との流血の衝突に至った原因については、「市民側が理性を欠いていたため」が53.8%で、「警察の行き過ぎた取り締まり」は19.7%、「双方に責任がある」は11.5%だった。

懸念が相次ぐ

 国民党寄りのメディアには、「群衆を集めるだけ集めておいてコントロールできなかった」など蔡英文民進党主席の責任を問うものが目立つ。一方、独立派寄りの自由時報は、「強圧的な中国と軟弱な馬総統が台湾人をやむにやまれぬところまで追い詰めた」と抗議活動を弁護する論調で報じた。

 独立派の抗議デモは陳会長の訪台中休むことなく続けられた。これに対しては、「意味のない闘争に消耗していると、経済発展に邁進(まいしん)しようという心が揺らいでしまい、台湾にとって全くプラスにならない」(郭台銘・鴻海精密工業董事長)や、「国際社会で台湾が暴力的なイメージを持たれてしまう」(胡志強・台中市長)など、悪影響を懸念する声が相次いでいる。

対中交流の手法問われる

 馬政権にとっては、中台交流の大幅拡大を公約に総統選を戦い、それで当選した以上、同路線を推進するのは当然のことだ。しかし、かつて「国民党の最終目標は統一」と発言した馬総統は、中台関係では何をやっても独立派から「統一への布石」と受け止められてしまい、溝が埋まる気配は全くない。

 だが、今回の陳会長訪台で中華民国の青天白日満地紅旗も厳しく取り締まるなど「過剰警備」が問題視されたように、ひたすら強圧的に自己の路線を押し付けるようであれば社会的対立がより先鋭化し、より大きなコストを支払うことにもなりかねない。馬政権は、対中交流の進め方と社会の安定維持のバランスという課題を突き付けられた形だ。