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脱原発政策の見直しを、産業界が要望【図表】(トップニュース)/台湾


ニュース 公益 作成日:2024年5月7日_記事番号:T00115155

脱原発政策の見直しを、産業界が要望【図表】(トップニュース)/台湾

 産業界は、5月20日に発足する次期政権に対し、脱原発政策の見直しを呼び掛けている。電子機器受託生産大手、和碩聯合科技(ペガトロン)の童子賢・董事長は5日、稼働を停止した第2原子力発電所(新北市万里区)を再稼働し、2025年に運転期限を迎える第3原発(屏東県恒春鎮)の稼働を延長するほか、フィンランドのオルキルオト原子力発電所(原発)3号機(OL3)のような新型原子炉(EPR)を4機設置することを提言した。工業の経済団体、中華民国全国工業総会(工総、CNFI)の潘俊栄・理事長はあす8日、頼清徳・次期総統と面会し、エネルギー政策は企業の存続、台湾の経済発展にとって非常に重要で、もはや脱原発を推進しないのが世界の共通認識だと伝える方針だ。7日付工商時報などが報じた。

/date/2024/05/07/00lai_2.jpg頼・次期総統(4日=中央社)

 童・ペガトロン董事長は、稼働を停止した第1原発(新北市石門区)と、2015年に建設を中止した龍門原発(いわゆる第4原発、新北市貢寮区)に、新型原子炉をそれぞれ2機建設すれば、第2原発と第3原発と合わせ、原発の電源構成(エネルギーミックス)は30~32%となり、電気料金を30%引き下げられると指摘した。再生可能エネルギーが20%に達すれば、温室効果ガスを排出しない発電が合計50%になると計算した。

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 童・董事長は、もともと原発推進主義者というわけではなく、30年前には原発に反対していたが、原発なしでは、台湾だけでなく、世界も2050年の温室効果ガス実質排出量ゼロ(ネットゼロ)を達成することはできないと主張した。

 童・董事長は、民進党のシンクタンク、財団法人新境界文教基金会の副董事長(副会長)を務めている。次期経済部長の郭智輝氏は、新境界文教基金会の董事(役員)だ。

「電気料金は変わらず」

 童・董事長の提言に対し経済部能源署(エネルギー署)は同日、第2原発と第3原発を稼働し、新型原子炉を導入しても、台湾の年間電力使用量2800億キロワット時(kWh)が毎年2%増加するとして、原発の電源構成は30%に届かないと試算した。また、新型原子炉の建設は1機当たり120億米ドルかかり、燃料などを合わせると、発電コストは1キロワット時(kWh)当たり3台湾元(約14円)の計算で、天然ガス火力発電と大差はなく、電気料金が3割安くなるとは言いすぎだと指摘した。

 経済部能源署は、原発の運転期限を延長するかどうかは立法院(国会に相当)が決定することと説明した。

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 2011年3月11日の東日本大震災の福島第一原発事故を受け、台湾では脱原発ムードが高まり、馬英九・総統(国民党、08~16年)は14年、第4原発の建設凍結宣言を迫られた。蔡英文・政権(民進党、16~24年)は、25年の脱原発政策を推進し、17年に電業法改正案が成立した。その後、18年11月に実施された住民投票で、「2025年以前に全ての原子力発電所を停止することを明記した電業法条文の削除」の議題が成立したため、25年以降も原発を使用することは可能な状況だ。

 台湾電力(TPC)の統計によると、TPCの23年発電量は2455億kWhで、うち火力発電が81.8%、再生可能エネルギーは9.9%を占め、原発は7.0%だった。

 

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