台湾を代表する液晶パネルや半導体ファウンドリーの大手メーカーが、不景気の中、必死のコスト削減策を進めている。奇美電子(CMO)は無給休暇を導入したほか、友達光電(AUO)は上級管理職らを対象に10~15%の減給を実施する。一部の工場で「2勤3休」となっていると観測されている台湾積体電路製造(TSMC)は、当面の人事凍結を決めた。18日付蘋果日報などが報じた。
パネル2位の奇美電は減産に伴って人手余りとなり、無給休暇の導入を決めた。
同社によると、有給休暇枠が未消化の社員にはまず同枠を消化させ、その上で無給休暇を取らせている。社員の生活を考慮し、無給休暇の日数は日勤の社員は月5日まで、夜勤の社員は7日を上限にしている。「稼働率が低下したため、社員に対する仕事の保障と企業の永続的な経営のためにはやむを得ない措置だ」と説明している。
パネル2社の資本支出、来年ゼロに
同日付経済日報によると、最大手の友達光電(AUO)は工場長・処長クラスの幹部で10%、上級管理職で15%の給与削減を12月から実施することを決めた。
AUOと奇美電はもともと今年末に8.5世代工場への設備搬入を行うと表明していたが、受注がない中で8.5世代工場の投資計画はいったん保留となり、両社がこれまで毎年約2,000億台湾元(約5,850億円)を投じてきた資本支出は、来年はゼロになるとみられている。
TSMC、人事を凍結
蔡力行執行長(CEO)が先週「あらゆるコスト削減策を採る」と表明していた台湾積体電路製造(TSMC)は17日、人材募集の原則停止を含め当面人事を凍結することを明らかにした。ただ、特殊業務に欠員が出た場合は柔軟に対応する方針だ。
同社は生産能力利用率が第3四半期の95%から現在70%以下まで低下しており、年末段階で60%、来年第1四半期には55%まで落ち込むという予測も出ている。稼働率低下に伴い、エンジニア1,000人を研究開発(R&D)部門に回している。
工場によっては既に「2勤3休」、エンジニアは週休3日になっており、こうした対応を他の工場にも広げていくという見方が出ている。同社広報担当の曽晋皓公関部副処長は「無給休暇もコスト削減の選択肢の一つだが、まだ結論は出ていない。来年第1四半期後の受注状況を見て決める」と語り、今後業績がさらに落ち込めば無給休暇の導入もあり得ると示唆した。
聯発科、「人材を選別する」
ファウンドリー2位の聯華電子(UMC)も無給休暇について、「受注がさらに落ち込む場合は方法の一つとして考えられるが、もう1カ月状況を見る必要がある」としている。
半導体業界ではこのほかIC設計最大手、聯発科技(メディアテック)の蔡明介董事長が17日、「景気は本当に悪い。人事考課の頻度を増やして不必要な人材をふるい分けていきたい」と発言した。
パネルや半導体分野の最大手が無給休暇の導入や人事の凍結までも迫られるほどの不景気は異例で、これらのメーカーが投資を抑制すれば影響は大きく、景気を悪循環へと向かわせる要因の一つとなる。