劉兆玄行政院長は25日、建設業会との会合で、建築免許の2年間延長や、住宅ローン専門の窓口機関設置などを含む8項目の不動産市場救済政策を今年末を目標に推進することで合意した。不動産市場が急速に冷え込む中での取り組みに業界からは歓迎の声が上がっているが、「不動産価格が依然高過ぎることこそ問題」など、政策の効果を疑問視する見方も出ている。26日付聯合報などが報じた。
8項目にはこのほか、▽都市再開発の手続き簡素化▽都市再開発条例の改正の早期推進▽不動産証券化条例の改正推進▽投資移民の最低投資額の3,000万台湾元から1,500万元(約4,300万円)への引き下げ▽廃土問題の解決▽北部交通網の早期整備──が盛り込まれている。
建設業界からこのほか、▽中国資本による不動産市場への投資規制緩和▽海外所得に対する課税最低ラインの引き下げ▽不動産売買契約税と印紙税の廃止▽所得税の住宅ローン控除の引き上げ、または上限廃止▽「建設部」の設立──など6項目の提案がなされたが、政府との間で合意には達せず、引き続き検討することとなった。劉行政院長は、合意8項目と検討対象6項目を「不動産振興プラン」としてまとめ、12月末までに行政院会(閣議)に提出するよう、公共工程委員会(工程会)に指示した。
台北市の不動産取引、3割減
今年は3月をピークに不動産価格の下落が進み、台北市では1坪当たりの平均価格が9月時点で29万8,000元となり、半年間の下落幅は20%に達した。同市の第3四半期の不動産取引件数は1万4,097件で、前年同期比で31.7%減少となった。景気回復にはまだ時間がかかるとみられることから、政府によるこのタイミングでの不動産救済策に、業界からは支持の声が相次いでいる。
遠雄建設の趙藤雄董事長は、即効性があるとされる「建築免許の2年間延長」について、「建設業者が物件建設のタイミングを市場動向を探りつつ決められるようになり、供給過剰を防げる」と評価する。来年は台北県を中心に6万5,000件の新規物件の供給が予定されており、不動産市場の低迷が続いて全土の取引件数が通年で60万件を割った場合供給過剰が起き、さらなる価格低下の悪循環を生むことが懸念されているという。
趙董事長によると、台湾の富の3分の2は不動産に集中している。「自宅所有者656万世帯の平均市場価格を600万元と計算すれば資産総額は40兆元で、仮に価格が1割上昇すれば4兆元の新資金が生まれることになる。その1割が消費に回れば景気を刺激できる」と語り、台湾における不動産政策の重要性を強調した。
頭金2割で可能に
また、景気の悪化に伴って、不動産購入に当たって求められる頭金は、従来の約2割から現在3割まで上昇している。消費者と銀行の間でトラブルが多発していることを受けて、仲裁に当たる専門の窓口機関が行政院金融監督管理委員会(金管会)銀行局によって設けられることになった。同局では、経済部中小企業信用保証基金を担保として、「頭金2割、住宅ローン8割」で消費者が住宅が購入できるよう、銀行業界に指導を行っていく方針だ。
ただ、これについては銀行業界から、「問題は依然不動産価格が高過ぎることにある。金利上昇やリストラなど収入減のリスクもあり、ローン8割で購入者は果たして払いきれるのだろうか」という懸念が出ている。
逆効果の批判も
同様の見方は、不動産市場の専門家として知られる張金顎政治大学地政系教授からも示されている。張教授は政府の不動産市場救済策に対し、「今回の不動産不景気は3~5年続くとみている。8項目の施策は特効薬ではなく、建設業者の苦境を一時的に緩和できるだろうが、こうした措置を相次いで打ち出していけば不景気はかえって長引いてしまう」と批判している。