全土の失業者が47万人に達し、雇用対策が喫緊の政策課題となる中、劉兆玄行政院長は27日、2012年末までに45万6,000件の雇用機会を創出する計画を発表した。しかし、労働界などからは「景気の現状から見て壮大過ぎる数字」という冷めた視線が投げ掛けられている。10月に打ち出した「失業者雇用に1万元補助」の政策もほとんど効果を挙げておらず、雇用機会創出計画が思うような成果を挙げられない場合、馬英九政権の政策執行能力に対する評価がさらに低下する可能性がある。28日付中国時報などが報じた。
45万6,000件の雇用機会創出計画では、当面の対策として今年12月末までに、行政機関の書類整理、美化清掃などの仕事などで4万6,000件の雇用を見込む。行政機関での雇用は、09年から12年までの4年間では計20万件を想定している。また、公共建設拡大によって10万~20万件の新規雇用を生み出すべく、特別予算額を4,200億台湾元から5,000億元(約1億4,300万円)に引き上げる方針だ。
行政院労工委員会(労委会)は10月、「立即上工(即時就業)計画」として、3カ月以上失業している労働者を雇用した企業に対し、半年を限度に1人当たり毎月1万元の補助金支給に着手していた。同計画は対象者を1万5,000人と想定していたが、労委会は27日、対象の人数に上限を設けないこと、また「3カ月以上」の条件を撤廃し、リストラに遭った失業者を雇用するあらゆるケースを補助金支給の対象にすると表明した。
申請は10件以下
しかし、「立即上工計画」が効果を挙げるのは厳しいとみられている。同計画が打ち出された当時、全国工業総会(工総)は、民間で5,000件の就業確保に協力すると意向を示したが、11月下旬までに申請があったのは10件に満たない。
これについて、労働団体、台湾労工陣線の孫友聯秘書長は「企業は来年まで従業員の絞り込みを続けるとみられ、リストラをしなければそれだけで立派だ」と語り、採用意欲が非常に低い現状では補助金政策が効果を挙げるわけはなく、「労委会の言う『上限撤廃』は単なる言葉遊びにすぎない」と切って捨てた。
公共工事、効果の大きさを疑問視
各部会(省庁)は来週、劉行政院長の求めに応じて、創出できる雇用件数の再検討に追われるとみられる。ただ、ある官僚は「既に短・中・長期の数字を計算し終わったところだ。果たして(新しい数字を)ちゃんと実行できるのか不安になる」と打ち明ける。雇用計画はあくまで机上の計画で、実際に計画通り行くかは未知数だ。
政府は公共建設の拡大に大きな期待をかけているが、「効果は限定的」(辛炳隆台湾大学国家発展研究所教授)という批判も出ている。公共工事による雇用創出はブルーカラーと建設業者に限られている一方、今回の不景気では金融やハイテクなどホワイトカラー層にも多くの失業者が出ているためで、辛教授は児童に対する課外指導などのサービスなど「社会資本投資」を強化することが必要だと訴えている。
今回の雇用機会創出計画は規模が大き過ぎ、民間の人材需要に左右される面が大きく、成果は期待薄というのが台湾メディアの大方の見方だ。
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