ニュース 公益 作成日:2025年4月30日_記事番号:T00121415
台湾で唯一稼働している第3原子力発電所(屏東県恒春鎮)2号機の運転が5月17日に終了する。台湾電力(台電、TPC)は29日、2025年に大潭7号機(桃園市)など4基の大型ガス火力発電設備を稼働し、電力需要を満たすと説明した。産業界は電力供給への懸念から原発の運転延長を求める声が根強く、最大野党の国民党は原発の運転延長を可能にするよう法改正案を提出している。原発を停止した後も、論議は続きそうだ。30日付工商時報などが報じた。
原発稼働停止に備えて、ガス火力発電所大潭7号機(桃園市)では試運転が始まっている(台湾電力リリースより)
台湾では1970年代に原発の商用運転を始め、第1原発と第2原発(いずれも新北市)、第3原発の計6基を運転していた。11年の東日本大震災を機に脱原発の機運が高まり、16年発足の蔡英文・前政権が脱原発政策に転換し、18年以降、使用期限を迎えた原発が相次いで運転を停止した。経済部によると、総発電量に占める原発の比率は、16年の12.0%から23年に6.3%まで下がった。
TPCは、原発稼働停止に備えて、試運転中の大潭7号機や興達新1号機(高雄市)に加え、台中新1号機(台中市)を8月に、興達新2号機を11月に稼働する予定だ。これらの発電設備容量は計480万キロワットに達し、第3原発2号機(95万キロワット)を大きく上回ると説明した。
経済部によると、原発停止によって、発電電力量に占める火力の割合は8割を超える。郭智輝・経済部長は、新たに導入するのは天然ガスによる発電機で、無炭素・低炭素エネルギーの割合が増加し、大気汚染に悪影響は小さいと説明した。
卓栄泰・行政院長(首相に相当)は、再生可能エネルギーへの転換を推進しており、32年まで人工知能(AI)など先端産業の発展に必要な電力供給を確保できると強調した。
■AI・半導体需要で消費電力増加
近年、半導体工場や人工知能(AI)データセンターの消費電力が増えている。台北市電脳商業同業公会(TCA)の理事長を務める液晶パネル大手、友達光電(AUO)の彭双浪(ポール・ポン)董事長は先日、産業界に温室効果ガスの実質排出ゼロ(ネットゼロ)が求められる中、原発をエネルギーの選択肢に含めてほしいと政府に伝えたと明かした。米国から原発設備を購入すれば、貿易黒字の縮小にもつながると語った。
彭啓明・環境部長は先日、頼清徳・総統や卓・行政院長も「脱原発は神聖不可侵なものではない」との認識を示しており、政府は原発に対しオープンな姿勢を取っていると語った。国家の安全やエネルギーの安全の観点から、原発の稼働延長は確かに選択肢となり得るとの考えを示した。
頼・総統は昨年5月の就任後、折りに触れ、先進的な原発の導入に前向きな姿勢を示している。
郭・経済部長は29日のインターネット番組で、米国からのエネルギー調達のほか、将来的に小型モジュール炉(SMR)の調達もあり得ると語った。
また郭・経済部長は、原発の延長、再稼働には法改正が必要だが、公民投票(住民投票)の必要はないと述べた。
■世論と新技術を視野
TPCは、既に運転を終えている第1原発と第2原発は、再稼働が技術的に不可能で、第3原発の運転延長や再稼働には、安全審査や設備更新が必要で、すぐに再稼働することはできないと説明した。
国民党が提出した原発の運転延長や再稼働を可能にする内容を盛り込んだ法改正が成立しても、再稼働できるわけではない。
政府は第3原発の運転が停止した後も、立法院での議論や世論、新技術の可能性をにらみながら、エネルギー政策を進めていくとみられる。
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