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【一般公開】頼・総統就任1年演説(全文)


ニュース 政治 作成日:2025年5月20日_記事番号:T00121796

【一般公開】頼・総統就任1年演説(全文)

 昨日、新北市三峽区の北大国民小学校の外で悲惨な重大交通事故が起き、多くの死傷者が出た。行政院は直ちにプロジェクトチームを立ち上げ、私も昨夜、負傷者を見舞った。今後、中央の関係省庁と地方政府が協力し、遺族を支援するとともに、事故原因の早期究明と再発防止に努める。ここに亡くなられた方々とそのご遺族に深い哀悼の意を表し、負傷者の早期回復を願う。

/date/2025/05/20/17lai2_2.jpg頼・総統(総統府リリースより)

 政府の目的は国民に奉仕することであり、台湾の皆さんの信任に感謝する。1年前のきょう、私は国のかじ取りを任されるという重大な責任を負った。この1年、国民の皆さんと政府が手を携え、多くの困難を乗り越え、国家は着実に前進を続けている。

 国際社会から注目され、かつ国民の生活に深く関わる3つの大きな課題――気候変動、健康増進、社会の強靭(きょうじん)性(レジリエンス)強化――に対応するため、総統府に三つの委員会を設置し、すでに一定の成果を上げている。

 国際基準に合わせ、各部会がボトムアップ方式で自主計画を策定し、行政院の温室効果ガス実質排出ゼロ(ネットゼロ)小組がトップダウンで進める形で、6部門で20件の脱炭素重点プロジェクトを提案。2030年までに政府は1兆台湾元(約4兆8000億円)超を投じ、民間のグリーンファイナンスを少なくとも5兆元誘導し、35年には温室効果ガス38±2%削減の新国家目標達成を目指す。

 台湾の空気の質は改善しており、PM2.5(微小粒子状物質)の年間平均濃度は15年の21.82から現在は12.8へと低下した。今年から炭素賦課金(カーボンプライシング)制度を正式に実施し、政府は50年のネットゼロビジョンに向け、確固たる意志と柔軟な戦略で着実に歩みを進め、持続可能な成長と繁栄を世界と共に目指す。

 また、感染症のパンデミック(世界的流行)後の世界の挑戦に対応するため、国家レベルの防疫センターの建設を進め、防疫体制を強化した。がん検診の普及や新薬基金の創設、「健康台湾深耕計画」に5年間で489億元を投入し、今年の健康保険関連予算は712億元増加した。健保の持続可能性を確保し、「健康台湾」の実現により、国民の健康と国家の強さを確立し、世界に台湾の価値を示す。

 さらに、社会全体の防衛力を高めるため、国家レベルの資源や訓練体制を再整備し、実地検証も実施した。政府全体で17項目の対策をまとめ、統一戦線工作や情報戦への備えを強化した。行政院は4100億元の特別予算を編成し、うち1500億元は国家の強靭性向上に投入する。与野党の支持を期待している。

 国家の前進に困難はつきものである。先月、米国が新たな関税政策を発表したのを受け、私は5つの対応戦略を発表し、業界の声を聞く「産業傾聴の旅」を始めた。

 行政院も迅速に各界の意見を集約し、「安全レジリエンス強化特別法案」を策定し、国庫の剰余金を活用して4100億元の特別予算を編成。産業支援、雇用の安定、経済の強化、民生の充実、国土安全の強化を通じて、台湾の産業が激動の中でも前進できるよう支援する。

 特に、産業界との意見交換の中で、各業種からは「電気料金の引き上げは避けてほしい」との声が相次いだ。政府による台湾電力(台電、TPC)への補填を支持し新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行からロシアのウクライナ侵攻に至るまで、台湾電力(台電、TPC)が行ってきた民生用・産業用電力の補助による損失を解消し、TPCの財務体質を健全化して電気料金を安定させることが求められている。与野党が協力し、行政院の特別予算を可決することも期待されている。

 あらゆる業種が、電力供給の安定を強く望んでいる。実際、エネルギーの安全保障はすなわち国家安全保障である。したがって、電力の安定供給を確保しつつ、多様な再生可能エネルギーの開発を進めることは、過去も今後も変わらず、政府にとって最も重要な取り組みの一つだ。

 また、国民が関心を寄せる米国との関税交渉も、前回の対面交渉後、順調に進行している。政府は「国益優先」「産業の維持」「どの業界も犠牲にしない」の3原則に基づき、台湾の立場を堅持し、台米経済関係を深化させつつ、バランスの取れた最善の結果を追求する。

 台湾は世界の民主主義のパートナーと民主の価値を共有し、自由市場の原則に則って共に発展してきた。これこそが私たちにとって最大の資産であり、多くの台湾企業が活力とエネルギーを発揮するための「保護傘」でもある。そしてそれは、私たちと権威主義体制との最大の違いでもある。

 これまで長年にわたり、台湾は米国や他の民主国家と積極的に交流と協力を進め、互いに切磋琢磨してきた。友人同士であれば、摩擦が生じることは避けられないが、最終的には調和に至ることができる。聖書にも「鉄が鉄を磨けば刃ができる。友人もまた、互いに研磨し合う」とあるように、友人とは互いに切磋琢磨し、欠点を克服し、長所を引き出し合うものだ。意見の違いがあったとしても、信頼に基づいた誠実な対話があれば、より深い理解と友情を築くことができる。

 今や台湾の市場は世界に広がり、舞台も国際的なものとなっている。これからも私たちは、民主主義への信念を貫き、多様な市場の開拓を続けていく。

(1)経済路線
 市場主導の立場から、台湾を基盤に世界展開を進め、米国との経済路線を強化する。フィリピン、インド、ベトナム、タイとの投資保障協定を更新する。カナダとの投資促進・保障協定を締結する。今後も同盟国との投資協定、二重課税回避協定の締結を推進する。

(2)貿易戦略
 米国以外の民主国家との経済連携を拡大する。台米21世紀貿易イニシアティブの第一弾協定や、英国との貿易パートナー強化協定を締結する。他国との自由貿易協定も積極的に交渉を進める。環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)加盟も引き続き推進する。

(3)経済体質の改善
 台湾の経済体質は調整が必要であり、輸出志向と内需拡大の両立、ハイテク研究開発の強化と従来型産業の高度化、ソフトウエア開発と製造の強化という三つのバランスを取る必要がある。

 私たちは台湾の強みをさらに発揮し、国際企業の台湾投資と協力を引き続き促進していく。ここ数年、米インテグリスの高雄新工場、米マイクロン・テクノロジーの台中第4工場、米グーグルが台湾に設立する海外で最大の研究開発(R&D)センターなどが稼働を始める。さらに、米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、米エヌビディア、米クラウド企業も台湾に進出する。エヌビディアは昨日、台湾に海外本部を設置することを発表した。こうした国際的な協力を通じて、海外の先進技術を導入し、国際的な研究開発に参加することで、台湾をより強靭な経済体へと発展させていく。

 将来、政府は台湾経済の成長エンジンを強化するための基金を創設する。対外的には、グローバルな視野を持って国際市場への投資を進める。政府は主権基金を設立し、国家レベルの投資プラットフォームを構築する。これは台湾産業の強みを最大限に活かし、政府主導のもとで民間企業の力を結集し、世界展開を進め、人工知能(AI)時代の主要なターゲット市場と戦略的に連携するための取り組みだ。

 台湾においては、地域のサプライチェーン(供給網)を強化し、産業が変化に柔軟に対応できる力を高めていく。政府は国家発展基金の機能を拡充し、産業の再構築という目標を実現する。これにより、国内産業や中小企業の転換・高度化を支援し、国際競争力を高めるとともに、台湾産業の基盤をより強固なものにする。

 国民の皆さん、民主主義は、私たちの市場であり、価値であり、国の力を示すものである。かつて台湾は、世界で最も長く戒厳が敷かれていた国だったが、今ではアジアの民主主義の灯台となっている。これまで、多くの先人たちが犠牲を恐れず、次々と立ち上がって権威主義に立ち向かい、民主主義を追い求めてきた。今の若い世代もまた、あらゆる合憲・合法な手段を使って困難に立ち向かい、積極的に政治に参加し、国家を守り、民主を深化させ、多様性に満ちた台湾のために努力している。これこそが誇るべき民主台湾の姿だ。

 私は信じている。民主と自由のある生活を手放す台湾人はいない。そして、民主と自由の価値に背くことのできる総統も存在しない。台湾の民主主義は、決して憎しみをあおって動員することで築かれてきたものではなく、市民の参加と結束によって形づくられてきた。私たちは意見の違いを恐れない。民主の核心とは、意見の分かれる中にこそ団結を見いだすことにあるからだ。

 私は常に信じている。民主主義における対立は、より大きな民主によってこそ解決されるべきだと。この一年、国内の政治情勢に向き合う中で、与野党は共に協力して米国大統領の就任を祝う代表団を編成し、民主台湾の団結と台米関係の深化を世界に示した。私はまた、憲法で総統に与えられた権限に基づき、「五院国政協議」を開始し、和解を実現し、協力を促進することを目指す。

 私たちは常に両手を広げて、与野党間の対話を促進し、政党間の協力を強化する努力を惜しまない。したがって、私は国家安全チームに対し、野党の党首に重要な国家安全情勢についてのブリーフィングを実施するよう指示する予定だ。与野党の指導者が政治的立場の違いを超え、国家の利益を最優先に、国家の安全を守ることを前提とし、共通の事実認識のもとで率直かつ誠実に意見を交わし、国政を共に議論し、国家が直面するあらゆる課題に力を合わせて取り組むことを期待している。

 台北で間もなく開催される情報技術(IT)見本市、台北国際電脳展(コンピューテックス台北)は世界が注目している。台湾は「世界のシリコンアイランド」として、グローバル経済とAIの神経中枢を担っている。かつて台北・松山空港近くの小さな展示場から始まったが、40年余りにわたって規模が拡大し、今や世界的な技術発展のマイルストーンになった。これは台湾人の努力の結晶であり、現在の台湾はもはや「世界の台湾」である。グローバルな技術発展、国際的なサプライチェーンの分業、世界の経済・貿易交流、地域の安全保障――どの分野においても、台湾は極めて重要で、欠かすことのできない鍵となる存在である。

 国民の皆さん、困難に直面しても、私たちは決して後退しない。未来に向かって、力強く前進していこう。「三分は天命、七分は努力」と言われる。私たちは団結し、台湾人の粘り強さと闘志で、逆風の中でも変革を遂げ、着実に歩み続ける。これこそが台湾人の精神だ。私たちはさらに団結して努力を重ね、台湾を「世界の光」「平和の舵取り」「繁栄の推進者」として輝かせていく。ありがとう、皆さん。

/date/2025/05/20/17lai3_2.jpg頼・総統(総統府リリースより)