ニュース 政治 作成日:2025年8月25日_記事番号:T00123697
5月17日に台湾電力(台電、TPC)の第3原子力発電所(屏東県恒春鎮)が運転を停止し、「原発ゼロ」となった台湾で23日、第3原発再稼働の是非を問う住民投票が行われ、賛成票(再稼働に同意)が反対票を3倍近く上回ったものの、有権者数の4分の1という要件に届かず、投票は成立しなかった。人工知能(AI)ブームで電力需要が高まる中、原発再開を容認する意見が強いことが表れた形だ。頼清徳・総統は同日夜の記者会見で、社会が多様なエネルギーの選択肢を期待していることも理解しており、条件付きで先進的な原発を排除しないと述べた。24日付聯合報などが報じた。
頼・総統は、原発を巡る議論は数十年続いているが、台湾社会の最大の共通認識は「安全」だと述べた(総統府リリースより)
住民投票は「第3原発が主管機関の確認により安全上の懸念がないと認められた場合、運転を継続することに同意するか」と問う形で行われた。投票率は29.53%にとどまり、有効な賛成票は434万1432票(74.17%)、反対票は151万1693票(25.83%)だった。賛成票は成立に必要な要件になる有権者数の4分の1(500万523票)に65万票余り足りなかった。
全ての県市で賛成票が反対票を上回った。第3原発がある屏東県は賛成12万720票、反対9万460票、屏東県恒春鎮は賛成4103票、反対2658票だった。
住民投票の実施を提案した第2野党、台湾民衆党の黄国昌・主席は、不成立となったものの、台湾社会が原発を支持していることを示し、着実に社会の共通認識になりつつあると指摘した。投票率を上げるためには、選挙と同時に実施すべきだと法改正を提案する意向を示した。
現在の住民投票は2年に1度、8月の第4週の土曜に実施すると定められている。投票率は住民投票で過去3番目に低かった。
住民投票の実施に賛成し「同意票」を呼びかけていた最大野党、国民党の朱立倫・主席は、民意は十分に示され、7割以上の市民が安定している原発を支持していると指摘した。原発の運転期間を最長20年延長できるようにする「核子反応器設施管制法(核管法)」の改正案が5月に立法院で可決されたことを踏まえて、政府は確実に実行すべきだと主張した。
■先進的な原発を
頼・総統は、住民投票の結果を尊重し、社会の多様なエネルギーの選択肢への期待を十分理解していると述べた。改正核管法に基づき、核能安全委員会(核安会、旧・行政院原子能委員会)が安全審査の規定を定めた後、TPCが自主安全検査を進める。
頼・総統は、▽原発の安全に懸念がないこと、▽放射性廃棄物(核のごみ)の解決策があること、▽社会的合意があること──という3原則に基づいて慎重に対応すると強調した。その上で「将来、技術的により安全で、放射性廃棄物が少なく、社会に広く受け入れられれば、先進的な原発の選択肢を排除しない」と付け加えた。
23日付経済日報によると、脱原発方針を40年ぶりに転換するスウェーデンの国営電力会社は21日、米国GEベルノバと英国ロールスロイスの小型モジュール原子炉(SMR)を採用すると発表した。
■TPC、自主安全検査へ
TPCは、住民投票の結果を尊重し、10月に核管法の関連法が公布され次第、第3原発の自主安全検査を開始すると表明した。再稼働計画、老朽化評価、放射線の影響、耐震安全評価、終期安全分析報告などを行い、安全を最優先とすると説明した。安全検査には1年半から2年かかる見込みだ。
経済団体、中華民国工商協進会(CNAIC)は24日、政府は現実的にエネルギー政策を見直し、電力を安定供給するため、原発を考慮するべきだと提言した。ほかの経済団体も、火力発電は市民の健康を害しているとして、原発の安全検査や再稼働を呼びかけた。
台湾では、2011年の東京電力福島第1原発事故を機に「脱原発」の機運が高まり、蔡英文・前政権(民進党)が40年の運転期限を迎えた原発を順次停止した。頼・政権(民進党)が今年5月に「原発ゼロ」を達成した。
欧米や日本などでは原発の活用が再評価されつつある。台湾でも、生成AI(人工知能)の急速な普及で、データセンターや半導体需要が高まり、電力不足を懸念する声が上がっている。
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