米アップルのタッチパネル式スマートフォン、iPhoneが米国時間のきょう29日にいよいよ発売される。台湾メーカーでは組み立てを行う鴻海精密工業をはじめ、部品供給でiPhoneにかかわるメーカーは少なくない。タッチパネルの成長を見込んだ、供給チェーンの形成が進んでいる。
29日付工商時報によると、昨年までタッチパネル分野で黒字を計上した企業はなく、減資をせざるを得ない企業もあった。しかし、分野の成長性を見込んで新たな進出企業は多く、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)と統一集団の合弁による時緯科技(SWENC)や、神達(マイタック)グループと関係の深い介面電子、奇美グループの奇菱科技、鴻海グループの群創光電(イノルックス・ディスプレイ)と正イ精密工業(イは山の下に威、フォックスリンク)などが挙げられる。特に群創はタッチパネルの研究開発(R&D)チームを立ち上げており、来年第1四半期の生産開始を目指している。
現在、上場公開企業のうち、原材料である透明導電膜基板(ITO)から組み立てまでを行えるのは勝華科技(ウィンテク)のみ。
個別の製品でみると、ITO生産は、冠華科技(AVCT)、ライ?科技(ライは金へんに来、ライテック)傘下の安可光電、正隆グループの正太科技(ジェムテック・オプトエレクトロニクス)などが取り組んでいる。タッチパネルのIC設計は、義隆電子(ELAN)、迅杰科技(ENEテクノロジー)、緯詮企業が、ソフトプレートは嘉聯益科技(キャリア・テクノロジー)、旭軟電子科技(サンフレックス)、台郡科技(フレキシウム・インターコネクト)などが手掛けている。ソフト供給は蒙恬科技(ペンパワー)が、組み立ては勝華、仕欽科技(エバースキル・テクノロジー)が担当している。
上流は日米が握る
タッチパネルは一枚の透明パネルで、ブラウン管(CRT)や液晶ディスプレイ(LCD)の上に貼付する。指や電子ペンでパネルを圧迫することでパネル上に信号が発生し、制御回路および駆動ICの情報処理を経て、CRTやLCD上に情報が表示される。
製造プロセスは、ITOガラスを中心に組み立てていく形で、最上流のガラスは米コーニングと旭硝子の2大大手が握っている。化学原料とPETを加えてITOガラスとし、ITOフィルムを取り付ける。ちなみにITOフィルム生産は日系の独壇場だ。再度化学原料を加え、ソフトプレート、制御ICなど多数の電子部品を取り付けて組み立て完成させる。
タッチパネル生産では、上流の主要原料を米国・日本企業が握っており、台湾メーカーはまだ中流のパネルおよび部品製造にとどまっている。台湾が主体性を発揮できる分野になるには、まだ時間がかかる状況だ。
なお、タッチパネル技術は将来、抵抗式から静電容量式へと移り、フレシキブルタッチパネルや赤外線タッチパネルが次世代の主流になる。赤外線技術の導入後は現在のITO技術は使われなくなる可能性が高く、その場合、ITOメーカーは、次世代の薄膜太陽エネルギー製品への転換を進めるとみられる。