ニュース 自動車・二輪車 作成日:2009年1月7日_記事番号:T00012664
裕隆集団は6日、新たな高級車自社ブランド「LUXGEN(納智捷)」の発表会を行った。裕隆は台湾での業績が頭打ちとなっており、LUXGENの成功に起死回生の期待を掛けている。しかし、グループ内部からは「うまくいく可能性はゼロに等しい」と、早くも展開を危ぶむ声が挙がっている。経済誌「今周刊」最新628号などが伝えた。
LUXGENブランドを発表する厳凱泰・裕隆集団董事長(中)=納智捷汽車提供
LUXGENは今年第2四半期に高級MPV(多目的車)を発表するのをはじめ、台湾市場で年内にSUV(スポーツ多目的車)やセダンの4車種を投入する計画。MPVの販売価格は80万~120万台湾元(約227万~340万円)とする予定だ。
また、中国では2010年に最初のLUXGENブランド車を投入する。厳凱泰董事長は昨年12月、中国工場の予定地、杭州市蕭山臨江工業園区で「納智捷汽車」の石碑の除幕式を行っている。工場への投資額は総額111億元を予定する。
LUXGENのMPVには宏達国際電子(HTC)と共同開発した自動車用コンピューター「THINK+」が搭載される。7日付聯合報によると、「THINK+」は通信やナビゲーション、アミューズメントなどの6種類の機能を持つ、台湾市場では現段階で最も進んだ自動車システム。都市部の駐車場の空車状況などの情報を得ることができ、「車内を移動オフィスやアミューズメント空間に変える」ことがアピールポイントだ。
THINK+。空車状況の最新情報で、ドライバーは駐車場をあちこち探し回る必要がなくなる=納智捷汽車提供
多ブランド化戦略も失敗
裕隆が新ブランドの展開を決めた背景には、同社が厳しい環境に置かれている現実がある。
昨年の台湾自動車市場の販売台数は23万台を割り込み、2005年の51万4,600台から56%減。裕隆傘下の裕隆汽車、中華汽車工業は08年の赤字計上が確実となっているが、スイス銀証券の最新予測によると、今年の自動車市場はさらに10%の縮小が予想され、光が見えない状況だ。
裕隆集団は多ブランド化戦略として3年前、米GMおよびクライスラーとの提携で、裕隆通用汽車と台湾克萊斯勒汽車を設立。裕隆通用傘下にキャデラック、オペル、ビュイックの3車種の販売網を設けたが業績は低迷した。資本金を使い尽くした際の増資呼び掛けに応じる企業はなく、裕隆汽車の参加によって何とか販売網を維持した経緯がある。ちなみにGMは昨年12月、経営危機を受けて裕隆通用汽車から撤退し、裕隆が今後単独で裕隆通用汽車を支えることになった。
低い知名度、克服に課題
こうした苦境の中投じられるLUXGENは、アジア最大の自動車市場、中国で一定のシェア獲得を狙う。厳董事長は「中国市場で、大手国際ブランドと地場ブランドの間には3~5年の落差がある。われわれはその落差をマーケットして狙っていく」と語る。しかし、期待通りにいくかは未知数だ。
これまで順調な成長を続けていた中国自動車市場は昨年下半期、金融危機の影響で大きく落ち込んだ。専門家からは今年はマイナス成長、10年も調整期が続くという予測が示されている。
また、既にトヨタ、ホンダ、GM、フォード、フォルクスワーゲン、ヒュンダイなどの海外大手が進出。地場大手の奇瑞汽車と吉利汽車を合わせた市場シェアは8割を超え、激しい価格競争が繰り広げられている。こうした中、全く知名度のないLUXGENが市場を開拓していくことには、かなりの困難が予想される。中国の自動車コンサルティング経験者は「LUXGENのMPVは価格設定が大きな課題となる。スタンダードの10万~13万人民元(約137万~178万円)の価格帯では地場の奇瑞や江淮との厳しい競争となり、14万~20万人民元の価格帯はホンダやフォードとの戦いになる」と指摘している。
こうした状況が頭にあってか、6日の発表会で厳董事長は、LUXGENの市場としてロシアや東南アジアを視野に入れていると初めて発言した。
自動車業界の専門家の多くがLUXGENの成功を疑問視しているが、裕隆集団の生き残りのため、厳董事長は悲観することすら許されない状況で、まさに「背水の一戦」となる可能性がある。
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