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作成日:2009年1月8日_記事番号:T00012670
仕事求め徒歩で20キロ、世間のつらさが身に染みる

不況で無給休暇の取得を余儀なくされている労働者数は、台湾全土で推定20万人。無給休暇もつらいが、リストラよりはまだましだ。失業後、仕事が見つからない厳しいケースも多く、路頭に迷う人が増えている。
「施しを受けるのは恥ずかしい。でも、本当に仕方ない」飲まず食わずの生活を送っていた失業者の小湯(34)は、福祉団体が配給するおにぎりを受け取り、目に涙をためて語る。
早くに両親を亡くし、兄弟もなかった小湯は結婚願望が強かった。高級職業学校(高職)卒業後、マイホーム購入と結婚資金のため、毎月の給料を恋人に託して貯金。ところがその彼女に、全財産の300万台湾元(約840万円)を持ち逃げされてしまった。
さらに多額のカードローン負債も抱えることになった小湯は、タクシードライバーになって借金を返済。家賃節約のためタクシーに寝泊まりしていたが、3年前タクシーが盗難に遭ったことからホームレスに。その後、レストランでアルバイトをしていたが、2カ月前にそのバイト先もつぶれ、失業してしまった。
小湯は6日、台北県八里郷での就職面接のため、午前6時に台北市万華区の公園を出発。彼の所持金はわずか29元。万華から八里まで往復60元のバス代はない。歩くこと20キロメートル、約3時間かけて到着したものの仕事はなかった。
「ベッドで眠る感覚なんてもう覚えていない」という彼は、住み込みの仕事を希望。唯一の望みは「ベッドでぐっすり眠ること」。
一方、雲林県在住の阿偉(32)は、妻と子供2人の4人家族。高職卒の彼は結婚後、妻と夜市で屋台の商売をしたが、うまくいかず、金物屋や配達員になったが失業。
3カ月前から葬儀屋でバイトを始めたが、雇用主から「給料が払えない」と解雇された。給料代わりにと渡されたのは、死に装束のスーツ2着(9,000元相当)のみ。「自分用に取っておくしかないか」と苦笑しつつ、阿偉は今日もこの死に装束を売るために「出勤」しているという。