台湾初の消費券の発行によって市民の消費意欲が大きく高まったことを受けて、政府報道官である蘇俊賓行政院新聞局長は19日、「経済成長率を1ポイント押し上げることができれば、2回目の発行を検討する可能性がある」と発言した。予想以上の消費刺激効果が生まれたことで、時期を見て二の矢を放とうという算段だが、今回ほどの効果は期待できないという声もある。20日付経済日報などが報じた。
消費券の用途はさまざま。南投県では廟のお賽銭に使う婦人も(19日=中央社)
政府は従来、消費券の経済成長率押し上げ効果を「0.64ポイント」としていたが、蘇新聞局長の発言からは、これ以上の効果が見込めるという感触を得ていることがうかがえる。実際、消費刺激効果の大きさは衆目の一致するところだ。20日付自由時報によると、台北市の百貨店はこの週末、業績が30~50%急上昇し、「長い間見られなかった熱い消費意欲が戻ってきた」と業界を感嘆させた。3C(コンピュータ、通信、家電)販売業者も単日の過去最高売上高を記録し、量販店にも買物客が殺到。台北晶華酒店(グランド・フォルモサ・リージェント・タイペイ)は790台湾元(約2,130円)のランチバイキングを消費券500元で提供したところ、終日満席となった。
消費券は就業促進効果も生んだようだ。婦人靴の阿痩皮鞋の劉冷紅人力資源部協理は、「消費券発行で春節(旧正月)期間の販売は例年比で1割増を見込めるため、臨時のアルバイトを雇うことにした」と語る。20日付蘋果日報によると同社の募集は100人で、仕事ぶりが良ければ優先的に雇用を検討するとしている。このほか、旅行業者の易遊網(ezトラベル)が消費券商機対応と拠点網拡大計画に合わせて増員を計画しており、居酒屋チェーンの和民も60人のアルバイトを採用する。
「相乗効果がポイント」
消費券効果について、陳添枝・行政院経済建設委員会(経建会)主任委員は「予想を上回りそうだ」と語った。「発行額857億元の消費は1回きりだが、2回、3回と消費していけば2倍以上の相乗効果を生むだろう。馬英九総統のように200元の消費券で1,000元の消費をすれば、相乗効果はかなり大きなものになる」と指摘した。
行政院が消費券再発行の目安として挙げた「経済成長率の1ポイント押し上げ」について、政治大学金融系の殷乃平教授は「問題ない」と指摘する。台湾の今年の域内総生産は13兆元で、1%は1,300億元。消費券の発行額は約800億元だが、消費拡大効果によってクリアできるという見方だ。
さらなる景気対策を表明
ただ、2回目の発行が今回と同様の効果を生むかについては、慎重な見方が多い。今回は発行時期が、元来消費が増える春節前の最後の週末に当たったことも大きな要素であるためだ。殷教授は、「2回目の発行を行うのであれば時期が重要になるが、いずれにしても効果は1回目よりは減退するだろう」と語る。行政院は2回目の発行を決める時期について、1回目の結果評価が終わる5~6月ごろとしている。
馬総統は消費券について、「短期的に景気を刺激する効果があるが、長期的効果は持ち得ない」とした上で、「政府は消費券と公共建設の拡大のみで十分だとは思っていない。今後こうした政策を増やしていく」として、さらなる景気対策を打ち出していく考えを示した。
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