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ASUS在庫悪化、広がるエイサーとの経営格差


ニュース 電子 作成日:2009年1月22日_記事番号:T00013035

ASUS在庫悪化、広がるエイサーとの経営格差

 
 華碩電脳(ASUS)は21日のインターネットを通じた業績説明会で、現在の在庫水準が450億台湾元(約1,200億円)に上っていることを明らかにした。同社は昨年第4四半期に、四半期ベースで初のマイナス決算となる30億元の赤字見通しを発表したばかりで、今回も在庫水準の高さに証券業界で改めて驚きが広がった。同社の経営管理の甘さは沈振来執行長(CEO)自身も認めており、ライバル、宏碁(エイサー)に差を広げられる最大の原因になっている。22日付工商時報などが報じた。
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 沈執行長によると、在庫の55%は製造用部品で、残り30%が製品、その他はアフターサービス用の部品だ。製品の在庫のうち、ノートパソコン(ノートPC)が約30%と最大で、次いでマザーボードが25%、Eee PCが約20%、モニターが10~15%だ。沈執行長はこれら在庫の削減を進め、第1四半期末で200億元の健全な水準を達成したいと語った。

市場動向を読み間違え

 在庫急増の直接の原因は、PC市場の動向を読み間違えたことだ。沈執行長が経済誌「今周刊」のインタビューで語ったところによると、同社は昨年10月第2週まで景気動向を楽観視し、クリスマスシーズンの消費意欲も減退しないと判断していた。金融危機の影響が広がる中、在庫を積み上げ続け、出荷抑制を始めたのはようやく11月になってからだった。

 「われわれは確かに経営管理の人材が不足している。世界のサプライチェーン、アウトソーシング管理などが特にそうだ」と沈執行長は語る。工商時報は、「ASUSはこれまで積極策によって成長を続けてきたため、リスク管理が軽視されるようになった」と指摘している。

徹底研究で逆転

 「台湾のダブルA」として何かと比較されるASUSとエイサーだが、低価格ノートパソコン(ネットブック)で展開してきた戦略を見ると、両社の違いがよく理解できる。

 ネットブック「Eee PC」を2007年10月に初めて世に送り出したASUSは、爆発的な人気商品になったことで世界レベルで知名度が大きく高まった。当初ネットブック市場では、ASUSの攻勢の前にエイサーは不利とみられていた。

 しかし、ネットブックに将来性があると感じたエイサーは、3カ月間かけて市場を徹底的に研究。その後発売した「Aspire One」は、08年第3四半期には単一機種で220万台を売り上げ、Eee PCの大小3種類、6機種の計170万台を逆転した。 Aspire Oneは現在も世界で最もよく売れているネットブックで、しかも一度のモデルチェンジも行っていない。
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Eee PCのユーザー把握できず

 一方Eee PCは当初、未開拓である新興国家の教育分野市場への進出を狙っていた。一方で先進国で2台目のパソコンの位置付けを目指そうという意見もあり、初期段階の位置付けに不安定さがあった。後にEee PCが欧米各地で大人気となった際、ASUSからは「意外だ」と好業績を喜ぶ発言が相次いだが、こうした反応こそASUSがEee PCの真のユーザーが誰になるのか把握していなかったことの裏返しと言える。このため後続製品の開発に当たっては、多くの規格によってユーザーの反応を探ろうとし、その結果Eee PCの製品ラインは複雑化して、マーケティング予算と管理コストが大幅に増加してしまった。

 ASUSの四半期売上高は800億~900億元に上るため、450億元の高水準の在庫にも対応できそうだが、リスク管理やマーケティング、製品の位置付け、それにブランドとOEM(相手先ブランドによる生産)の徹底した区分など、ASUSがエイサーに学ばなければならないことは多いようだ。

【表】