台湾積体電路製造(TSMC)の蔡力行総執行長(CEO)は22日の業績説明会で、今年第1四半期は1990年以来19年ぶりに四半期ベースで赤字に転落するという見通しを明らかにした。同社の在庫回転日数は現在70~80日の高水準に達しており、昨年10月の説明会で「在庫に問題はない」と発言していた蔡総執行長は、「判断を誤った」と投資家に謝罪した。今後は慎重な財務管理とさらなるコスト低減で苦境を乗り切りたい考えだ。23日付工商時報などが報じた。
60億元の赤字、売上高半減も
同社によると、今期売上高は前期比45~50%減の320億~350億台湾元(約847億~926億円)となり、粗利益率は1~5%、営業利益率はマイナス15%~マイナス19%にまで落ち込むとの予測だ。外資系証券会社は同社の今期の損失は60億元に達すると予想している。
また、同社の正常な在庫周期は50~55日で、現在は程遠い状態となっている。なお同日付電子時報によると、2001年のIT(情報技術)バブル崩壊時でも在庫周期は50~55日だったため、現状がいかに深刻かがうかがえる。
「09年半導体市場は3割縮小」
今年の業界見通しについて蔡総執行長は、「末端製品の売れ行きが予想よりはるかに低調で、世界市場での電子製品の出荷 量は昨年より15~20%減少する恐れがある」とした上で、「半導体産業の世界市場規模は30%縮小する」と予測した。さらにファウンドリーについては、業界の最上流に位置するため不況の影響を強く受けるとして、「前年比35%以上の縮小となる」との見方だ。
また、「半導体業界では今年に入り、受注が急増している」との報道が最近相次いだが、これについて蔡総執行長は、「確かに増えているが一過性のもので、受注見通しは依然非常に悪い」としている。このため、第1四半期は在庫水位の低下が予想されるが、第2四半期末までは不安定な状態が続くとみている。第2四半期に景気が好転するかについては「断言はできない」と弱気な姿勢を見せた。
また先日、同社が大規模な人員削減を実施するとの報道がなされたことについて蔡総執行長は、「現在のところリストラ計画も、人件費削減計画もない」と否定した。しかし、「今後リストラをしないと保証できるか」との問いに対しては「保証しないし、できない」と答えた。
資本支出は2割以上削減へ
TSMCの発表によると、昨年第4四半期の同社売上高は前期比30.6%減の645億6,200万元、粗利益率は31.3%、純利益は124億5,000万元となった。また通年では、売上高が前年比3.3%増の3,331億5,800万元、純利益は8.6%減の1,523億元となった。
なお、昨年の資本支出は18億8,000万米ドルで前年比26%縮小した。今年の計画については昨年末に「2割減」という見通しを示したが、経済日報は「削減幅はさらに拡大する」と指摘している。
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