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「両岸共同市場は幻想」陳総統が批判強める


ニュース 政治 作成日:2007年7月4日_記事番号:T00001325

「両岸共同市場は幻想」陳総統が批判強める

 
 中国国民党(国民党)の副総統候補者に、「両岸共同市場の創設」と「台湾の自由貿易地域化」が持論の蕭万長氏が決まって以来、陳水扁総統が「最終的に台湾の主権喪失と、中国による併合に道を開くもの」と批判を強めている。蕭氏の主張は安定した中台関係の構築と、その下での経済発展のあり方が主眼だが、「親中」にポイントを絞って先制攻撃を繰り出すことで、立法委員選挙と総統選挙に向けての支持基盤を固めることが目的とみられる。

 陳総統は3日、国巨電子(ヤゲオ)の創立30周年パーティーの席上で、「両岸共同市場とはすなわち『一中(一つの中国)市場』であり、台湾市場を中国に全面無条件に開放するもので、いわゆる『全面自由貿易地域』が実現すれば経済は守る壁がなくなり、労働市場と社会経済の安定に強烈な衝撃となる」と批判した。

 また、2005年8月に中国商務部がゼロ関税を宣言して実現した、台湾15種類の農産品の中国輸出を「一中市場」のモデルケースとして挙げ、「想像しにくいかもしれないが、中国農産品輸入の全面開放のための下準備だった」と指摘し、蕭氏の主張への危機感を煽った。
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自身も「対中積極開放」を推進した陳総統
経済問題で攻勢をかけるのは珍しいケースでもある(中央社)


孤立化を懸念

 蕭万長氏の主張の基本線は、「経済発展中の中国は良好な生産条件と市場を持ち、台湾はこれをうまく利用して発展していくことが上策」というものだ。「台湾の自由貿易地域化」は、「台湾を成長させ、アジア太平洋地域と連携し、全世界に展開する」という戦略の一環。台湾以外のアジア各国が自由貿易協定(FTA)網を拡大させている現状からみれば、「台湾のみが孤立することは、経済のみならず国際社会での地位低下につながり危険」という発想はごく自然なものだ。

 しかし陳総統は、「各国の例を見れば、共同市場はヒト、モノ、カネの完全な自由流通を意味する。両岸(中台)で一度共同市場が形成されると、大陸の労働者を自由に台湾に引き入れ、大陸の農産品も対台輸出が自由化され、台湾の資金も無制限に台湾に流れ込む。この結果失業の増加、労働者の所得減少、農民の生計圧迫が進み、産業空洞化はさらに進む。両岸共同市場はまさに災難の始まりだ」と強調する。蕭氏に対し意図的に「親中」のレッテルを貼って有権者にアピールすることが目的だが、実際「両岸共同市場」の主張に危うさを感じ取る有権者も多いことは想像に難くない。

「曲解」を批判

 現段階で野党陣営は、陳総統の批判の目的がレッテル張りにあることを理解しているためか、特に目立った反論は行っていない。経済統合が進む欧州連合(EU)でも、外国で自由に働けるようなことはなく規制されている例を挙げるなどして、陳総統の「曲解」を批判している。

 なお、国民党の総統選挙候補者である馬英九氏は、蕭氏を選んだ最大の理由として「経済再生」を挙げている。「両岸共同市場」をめぐる論戦は、選挙戦が進むにつれてさらに加熱していきそうだ。