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CECA論争、大陸委が「傾中」否定


ニュース その他分野 作成日:2009年2月20日_記事番号:T00013532

CECA論争、大陸委が「傾中」否定

 
 馬英九政権が中国との締結を目指す総合的経済協力協定(CECA)の是非をめぐり、政府と野党勢力との間の論戦が激しさを増している。中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の自由貿易協定(FTA)が2010年に発効するのを前に、何らかの対応措置が必要というのが政府の立場だが、野党側は対中開放によって台湾経済にダメージが与えられるなどと反発を強めている。これに対し頼幸媛行政院大陸委員会(陸委会)主任委員は、「中国大陸への全面開放はあり得ない」と「中国傾斜」批判を否定する投書を新聞紙上で発表し注目を浴びた。20日付経済日報などが報じた。
 
T000135321

頼幸媛大陸委員会主委。20日はCECAの協議内容に両岸人民関係条例を適用すると発言。やみくもな開放はしない意思を改めて示した(20日=中央社)
 
 CECAをめぐる論争は、今月12日に6大工商団体が政府に対し早期締結を求める共同声明を発表し、これに対し蘇起・国家安全会議秘書長が「政府の既定方針であり、海峡交流基金会(海基会)と海峡両岸関係協会(海協会)の協議で話し合う」と発言したことで火が付いた。なお、CECAが初めて言及されたのは昨年7月、馬総統による「両岸(中台)のダブルウインを追求したい」という締結を目指す発言で、これに対し中国は昨年末、賈慶林・政治協商会議主席と胡錦濤国家主席が前向きな意向を示していた。
 
「社会的合意なし」と批判
 
 20日付経済日報によると、行政院と総統府は現在、中国・ASEANのFTAをモデルにCECAの内容の検討を行っており、名称も台湾住民から幅広く受け入れられるものを検討しているという。しかし、これまで具体的な青写真は一切示されておらず、CECAの名称が「一つの中国」を前提にした中国本土・香港経済連携緊密化取り決め(CEPA)に近いこともあって、「台湾経済と中国経済の統合を進めるのではないか」という独立派の疑念を招いている。
 
 蔡英文民進党主席はCECAについて、「中国の労働者が台湾の労働者を締め出し、また、廃業に追い込まれる企業が増える。現段階で社会的合意ができておらず、やみくもに推進するのであれば社会対立を深めるだけ」と批判。また、本土派政党、台湾団結聯盟(台聯)は19日、「CECAを支持する人は11%のみ。50%以上が台湾と中国のこれ以上の開放・統合に反対している」という独自のアンケート結果を発表した。
 
 李登輝元総統のシンクタンク、群策会も19日、CECA締結に反対する座談会を開催し、林向?・台湾大学経済系教授が「締結によって台湾は中国を通じて他国と交流することを余儀なくされ、生存・発展のための自由な選択権を失って、事実上、中国と統一したのと同じになる。その後に法的統一がやってくる」と危機感を訴えた。
 
?主委、「台湾を守ることが原則」
 
 蔡主席の批判に対し、?陸委会主委は19日、「CECAは全面的開放を求めるFTAとは異なり、蔡主席は混同している」という投書を聯合報に掲載した。投書で?主委は、「台湾の生存は両岸の交流が前提で、締結によって台湾が『傾中』となったり『経済的主体性を喪失する』というのは論理の飛躍だ」と独立派を批判。一方で、「両岸経済関係の正常化の過程において、台湾の主権が少しでも損なわれることは許されない」という認識を示し、「このため台湾が中国に全面的開放を行うことは不可能だ」と強調した。その上で、「CECAは台湾を守ることを原則とし、利益と損失について精細な分析を行う」という方針を示した。
 
 馬英九総統も19日、「CECA締結に当たっては、保護すべき産業、開放すべき産業を非常に慎重に考える」と語り、産業界の利益を重視する姿勢を示した。なお、独立派から「CECA締結の是非を住民投票で決めるべき」と求める声が出ていることについては、「これは総統選挙の公約だった」と語り、既に信任を受けているとして拒否する考えを示した。
 
 昨年の総統選では、馬候補が「両岸共同市場」の実現を公約した。これに対し民進党の謝長廷候補は「一つの中国市場だ」と批判し、反対を訴えた。CECAをめぐる議論は、対中関係のあり方をめぐる当時の論戦の延長戦の趣がある。なお、CECAは上半期中に予定されている第3回中台公式協議では取り上げられないものの、政府は年内には中国と話し合いを始める意向を示している。