中国が上海や南京をはじめ全国9カ所を石油化学基地として整備を進めており、3年以内に総製油量が2億1,000万トンに達する。台塑集団(台湾プラスチックグループ)の第6ナフサプラント10基分に当たる規模で、ガソリン、ディーゼル油、石化基礎原料を大量に輸入している中国石化業界の現状が大きく様変わりする。台プラの対中輸出はかなりの打撃を受けるとみられており、今後の新規投資においては製品の高品質化、および市場のすみ分けが課題となる。26日付工商時報が報じた。
中国の石化業界関係者が25日明らかにしたところによると、中国国家発展改革委員会エネルギー局はこのほど、全国9カ所に及ぶ製油基地の整備計画を策定した。上海、南京、寧波は年産量3,000万トンの3大基地とするほか、▽広州▽天津▽曹妃甸(河北省)▽泉州(福建省)▽茂名(広東省)▽恵州(広東省)──の6カ所は年産2,000万トン規模とする。
これら9大石化基地が予定通り完成すれば、中国は中東と並んで世界の2大石化生産地域となる。9大基地は長江沿岸の南京を除いてすべて沿海部に位置しており、専門家からは、輸出を視野に入れた戦略との分析も出ている。台湾や韓国、シンガポールなどアジアの石化メーカーにとっては、競争圧力が大きく高まる。
台プラのある幹部は、「中国石化業界は近年、台湾の基礎原料への依存度を低減しようと、第6ナフサプラントの模倣に努めてきた」と語った上で、9大石化基地について、「当グループにとって、石化製品や一部の基礎原料の中国輸出が大きな打撃を受ける」と率直に語った。同社は寧波にナフサプラントを建設し、中台双方の拠点の連携を長期発展の原動力とする構想を持っていた。しかし、寧波での投資認可がなかなか下りない中、今後は成長を続ける中国石油化工集団(中石化)との厳しい競争にさらされるとみられる。中石化の昨年の製油量は1億9,000万トンで、米エクソンモービルと英蘭シェルに次ぐ、世界3位となっている。
ペトロラービグの脅威
同日付経済日報によると、台湾石化業界は現在、住友化学とサウジ・アラムコの合弁会社で、3月に生産を開始するサウジアラビアのペトロラービグを注視している。同社は世界最大のナフサプラントを持ち、主要石化製品の年産量は、▽エチレン、130万トン▽エチレングリコール、60万トン▽高密度ポリエチレン(HDPE)、30万トン▽低密度ポリエチレン、30万トン──に上る。
石化業界の関係者によると、ペトロラービグのエチレン、プロピレン、ポリエチレンなどは、台塑石化(フォルモサ・ペトロケミカル)、台湾塑膠工業(フォルモサ・プラスチックス)、台湾聚合化学品(USI)、亜洲聚合(アジア・ポリマー)の製品と競合し、台湾勢にとって重い圧力となる。
中東は原料価格が安く、エチレン1トン当たりの輸出価格は400米ドルにすぎない。エチレングリコールは、まだ生産を開始していない段階で市場価格に下落圧力を与えており、実際の生産開始後は、南亜塑膠工業(ナンヤ・プラスチックス)、東聯化学(OUCC)、中国人造繊維(CMFC)などの台湾メーカーに打撃を与えることは確実とみられている。
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