IC設計世界3位の聯発科技(メディアテック)は3日、これまでマイナス8~マイナス16%成長としていた第1四半期の売上高予測を、8~13%のプラス成長へと大幅に上方修正した。同期業績の上方修正は半導体業界で初めて。中国で家電普及に向け進められる「家電下郷」プロジェクトにより、山寨機(さんさいき)と呼ばれる、中小メーカー製の携帯電話で需要が好調なことが主な理由だ。4日付工商時報などが報じた。
メディアテックは、第1四半期は粗利益率も当初予測の54.5%を上回るとみている。証券会社ではメディアテックの予測を基に、連結売上高が2月、前月比で30%以上成長して80億台湾元(約224億円)を超え、3月もさらに成長が予想されることから第1四半期全体では223億~233億元となるとみている。
蔡明介メディアテック董事長は、「欧米市場で景気回復が見られない中、世界経済は大陸(中国)市場頼みとなっており、同市場が今年も経済成長率8%を維持するとみられることは良いニュースだ」と語っている。
春節後も需要は旺盛
メディアテックでは当初、春節(旧正月)前に増えた中国顧客からの緊急受注は、春節後には減少すると予想していた。しかし、現在も衰えを見せず、さらに増加しているという。 こういった状況を受け、同日付経済日報では、メディアテックから生産を受託するファウンドリーの台湾積体電路製造(TSMC)をはじめ、パッケージング・テスティング(封止・検査)の日月光半導体(ASE)、半導体商社の大聯大集団(WPG)を含め、域内半導体業界で今後、第1四半期業績の上方修正が相次ぐと予測している。
読めない「山寨機」市場
メディアテックが業績見通し修正を行ったのは、これで3四半期連続だ。これは山寨機市場が変動が激しいためで、同社が市場の動向を十分把握しきれていないことがうかがえる。
メディアテックは現在、携帯電話が売り上げの約7割を占め、顧客の大部分を大手ブランドではない、中国、インド、ロシア、タイなど新興市場の中小ノーブランドメーカーが占める。
工商時報によると、こうした中小メーカーでは綿密な出荷計画、厳格な在庫管理が行われておらず、あるタイプの機種が売れると、一斉にその機種に飛びつき、消費が落ちればまたすぐに発注を取り止めるといったように非常に臨機応変な性質を持っているという。
こうした機動性の高さを生かし、中国市場では携帯電話のみならず、ノートパソコン、デジタルカメラなど多くのコンシューマ向け電子製品で山寨機が隆盛を迎えているが、川上業者にとっては市場の動向が読みにくい状況となっており、メディアテックの業績予測がたびたび修正される要因となっているもようだ。
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