韓国の液晶パネル大手、LGディスプレイ(LGD)が9日、第8.5世代生産ラインの量産開始を発表した。これに対し奇美電子(CMO)の何昭陽総経理は「目的は台湾つぶしだ」と発言。世界的不景気による需要減退で業界が深刻な赤字に見舞われる中、あえて新世代工場で量産に踏み切りパネル価格の上昇を抑えるLGDの戦略に強い危機感をにじませた。10日付工商時報などが報じた。
LGDの発表によると、8.5世代ラインでは、主に32、47、55インチの液晶テレビ向けパネルを生産する。稼働当初の生産能力は、ガラス基板投入枚数ベースで月2万枚だが、年内にこれを8万3,000枚まで引き上げる計画だ。中国政府による農村部での家電普及を目指す「家電下郷」プロジェクト推進や、液晶テレビの販売価格が従来のブラウン管テレビ水準に近付きつつあることで、液晶テレビ向けパネルの需要が増加している状況に対応すると説明している。
経済日報によると、韓国勢はサムスン電子も2基目の8.5世代工場で、19、22インチの液晶モニター向けパネルの量産を始めるもようだ。
一方台湾勢は、友達光電(AUO)の8.5世代ラインが、早ければ第2四半期末に試験生産を開始し、第3四半期にやっと量産に入る計画だ。奇美電の8.5世代ラインに至っては、昨年末に設備搬入を開始したが、量産スケジュールは立っていない。
パネル業界では昨年下半期より台湾勢を含む世界の大手が平均30~40%に上る減産に取り組み、この結果、今年第1四半期には需要回復とオファー価格の反転上昇が始まっていた。何・奇美電総経理は、「この時点で、ウォン安と自社ブランドという2つの強みを持つ韓国メーカーが、値下げと増産を仕掛けてきた。しかし、絶対に倒されはしない」と、生き残りを果たすという決意を語った。何総経理は、韓国勢に対抗するには、「ブランドのない台湾とパネルのない中国」による中台連携が必須と考えているが、現段階では中国での前工程生産ライン設置が開放されていないことが問題だと指摘した。
LGD量産効果、5月ごろか
市場調査会社、ディスプレイサーチによると、第1四半期のオファー価格は、主流の32インチ液晶テレビ用パネルで約166米ドルだ。これを台湾メーカーが6世代ラインで生産した場合、製造コストは202米ドルで、損益分岐点となる価格は249米ドルに達する。
一方、今回LGDが量産に入った8.5世代ラインでは、ガラス基板が大きい分パネルを多く切り出せるため製造コストを低減でき、損益分岐点が240米ドルまで下がる。オファー価格が166米ドルであるためいずれも赤字だが、韓国メーカーのほうが若干有利だ。
ウォン安を追い風にフル稼働に入ったとも伝えられる韓国メーカーは、今年1月の世界シェアをこの4年で最高の55%まで拡大した。ある液晶モニターメーカーの予測によると、LGDの量産効果は5月ごろには出るもようだ。
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