財務状況が悪化している万泰商業銀行(コスモスバンク)に、鴻海精密工業の郭台銘董事長と大株主の米GEキャピタル、およびプライベートファンドの3者が200億台湾元以上の出資を行うことが決まった。万泰銀は経営の立て直しが見込めるとともに、鴻海はグループに近い金融機関を得ることになる。
11日付工商時報によると、今回郭氏が個人での出資を決めたのは、出資を通じてGEと関係を深めること、および金融業界への進出が目的だ。鴻海とGEが経営に参画することで、万泰銀は競争力の向上が期待できる。行政院金融監督管理委員会(金管会)によると、出資額は200億~270億元で、9月末までに1回で行われる。
万泰銀は経営の立て直し策として、不良債権の売却、多くの不良債権を生み出したクレジットカードの与信システムの改善、減資および増資による財務構造の改善を計画し、このうち増資は273億元を上限として受け入れる方針を表明していた。しかし、金額が膨大だったため、簡単には進展しないとみられていた。
一度は新光グループから、株式の売却代金をあらかじめ受け取る形で、6月末までに50億元の現金増資実施を計画したが、GE法務部から関連法規に抵触する疑いが指摘され立ち消えになっていた。今回の郭氏らによる出資決定は、急転直下の展開といえる。
増資決定については、万泰銀、鴻海ともコメントを行っておらず、鴻海のスポークスマンは「一切知らない」としている。
なお、万泰銀の許勝発董事長は、中華民国全国工業総会の理事長を務めていた20年前、まだ若手経営者だった郭氏を同会の総理監事会に抜てきしたことがあるなど、個人的に親しい関係にあるようだ。