台塑集団(台湾プラスチックグループ)が、合成ゴム市場への初参入を決めた。傘下の台塑石化(フォルモサ・ペトロケミカル)、南亜塑膠工業(南亜プラスチック)、台湾化学繊維(フォルモサ・ケミカルズ&ファイバー、台化)による3社合弁で「台塑合成橡膠公司」を設立する。急速に成長する中国自動車市場を好感しての判断で、タイヤチューブ原料となる高付加価値のブチルゴム(IIR)生産に今後180億台湾元(約520億円)の投資が見込まれる。21日付経済日報などが報じた。
新会社の資本金は12億元で、台塑石化、南亜プラ、台化がそれぞれ3分の1ずつ出資する。台塑石化は既に20日の董事会で、「台塑合成橡膠公司」への出資を決議した。
中国市場でタイヤ需要増へ
観測によると、台プラグループは昨年、南亜プラ主導で合成ゴムプロジェクトチームを結成し、参入への検討を開始していた。
当初は南亜プラ内部に合成ゴム部門を設置する方向で計画を進めていた。しかし、米国を超え世界最大の自動車市場に成長した中国で、3月下旬から農村への乗用車普及を目指し補助金 を支給する「汽車下郷」プロジェクトが始まったことで、タイヤ需要がさらに高まると判断。新会社設立によって商機獲得に全力で当たることを決めた。
中東メーカーの脅威かわせる
経済日報によると、同グループは、まず年産能力5万トンのブチルゴム工場を設置する。将来的には年産10万トンまで拡大し、製品ラインナップもスチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、ニトリルゴム(NBR)など一般ゴム製品にも拡大する計画だ。
台塑石化幹部は合成ゴム市場参入について、「ゴム生産の川上から川下までを統合することで(ゴム原料を生産していない)中東石油化学メーカーの脅威をかわし、活路を見出せる」と期待感を示した。台プラの参入は、台橡(TSRC)や南帝化学工業(ナンテックス・インダストリー)などの域内メーカーにとっても大きな脅威となるとみられる。
始動は第6ナフサ確定後
同計画は、台プラグループが昨年経済部に提出した第6ナフサ分解プラント(通称六軽)第5期拡張計画の一部に含まれるとみられ、合成ゴム原料の生産拠点は雲林県麦寮郷となる見通しだ。第6ナフサ5期計画によると、台塑石化は150億元を投じて設置するイソプレン、イソプレンゴム(IR)、SBR工場の3基を新設、南亜プラは200億元以上を投じてIIR、EPR、NBR新工場を設置するとしている。
ただ、第6ナフサ5期計画は、いまだ政府による環境影響評価審査を通過しておらず、台プラの合成ゴム市場での展開は同計画の正式な確定を待たねばならない。
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