中国の自動車最大手ブランドメーカーで、今年第4四半期に中国車メーカー初の台湾進出を予定している奇瑞汽車(CHERY)の尹同躍董事長は22日、経済日報のインタビューに対し、「台湾工場を海外販売に向けた生産・輸出拠点とする」という考えを示した。また、「台湾生産車は部品の6割を現地調達する」と語っており、域内部品メーカーも恩恵を受けそうだ。23日付経済日報などが報じた。
現在台湾は中国からの完成車輸入を禁じているため、奇瑞は台湾の太子汽車工業傘下、勝栄汽車工業と提携し、生産・販売を委託する。勝栄汽車の連佩斌執行長(CEO)は「台湾製の実力を証明するため、台湾生産の奇瑞車は、まず海外に輸出する可能性もある」と語っている。
中台の強みを結合
尹董事長は台湾生産車で使用する部品について、エンジン、トランスミッション、ボディなど大型部品は中国から供給するものの、それ以外は現地調達する方針を表明。また、台湾製部品を中国の工場で採用する可能性にも言及した。「台湾製の自動車用ライト、自動車用電子部品、電子制御装置などは非常に優れているが、台湾は市場規模が小さく成長が限られる」と指摘しつつ、「まだまだ大きな成長余地のある大陸市場と結びつけたい」と中台提携のメリットを語った。
奇瑞が大規模な台湾調達を行うことにより、直接、間接的な部品供給関係にある東陽集団、堤維西交通工業(TYCブラザー・インダストリアル)、台達電子工業(デルタ・エレクトロニクス)、内装の全興驟雨団、自動車用電子製品の中国端子などが恩恵を受けるとみられる。
安全性への不安解消に全力
奇瑞は今年末に、昨年末に発売した最新の中小型セダン「A3」、および商用小型トラック「優優」を台湾で生産、販売する計画だ。また、「上海モーターショー09」(4月20日~28日)で発表された「G5」「G6」といった高級セダンも、将来的に台湾に投入することも検討している。
台湾では、中国車は安全性に問題があるという見方が強いことに対し尹董事長は、「台湾に導入する製品はすべて、公開での衝突安全テストを実施して安全品質を証明し、『コピー車』という偏見を打破したい」との意気込みを示した。なお、C-NCAP(中国衝突安全テスト基準)において、世界の自動車業界各社の平均が「3つ星」となっている中、「A3」は最高水準の「5つ星」を獲得し、その他の車種でも「4つ星」以上を獲得して初めて市場に出していると強調した。勝栄汽車は5月に彰化車両テストセンターで「A3」の衝突実験を行う予定だ。
奇瑞汽車の中国市場での昨年の販売台数は、台湾全体の1.5倍に当たる約35万台に上った。今年は中国および海外合わせて50万台を目標としている。
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