行政院疾病管制局は29日、H1N1型豚インフルエンザを水際で阻止すべく、米国・カナダから桃園国際空港に到着するすべての航空機に対し、機内検疫を開始した。日本の措置に続くもので、台湾で特定の地区を対象に機内検疫が実施されるのは今回が初めてだ。
機内検疫と同時に、旅行客の体調に変化がないかを調べるため調査票の配布も始まった(29日=中央社)
29日は午前5時ごろ、サンフランシスコから到着した長栄航空(エバー航空)BR017便に対し、検疫官2人が乗り込んでの機内検疫が実施された。
疾病管制局によると、乗客・乗員で発熱やせきなどの症状を訴える人がいないかどうかを確認し、いた場合は機内にとどめて事情を聴く。桃園空港では現在、北米からを含め全旅客を対象に赤外線による体温測定を行っており、37度5分以上あれば一律、別室で詳しく状況を調べる。
米国・カナダから台湾に到着する便は1日10数便。この3日間の到着便数は約50便で、入境した旅客約1万5,000人のうち5人に発熱の症状がみられたが、全員新型インフルエンザには感染していないことが確認された。疾病管制局では、現段階では米国・カナダ以外からの便に機内検疫を拡大する予定はないとしている。
「ワクチンは3カ月以内に量産」
行政院衛生署長で、緊急対策本部に当たる中央流行疫病指揮センターの総指揮官に就任した葉金川氏は28日夕方、新型インフルエンザ対策について、「長期的なものになり、冬が過ぎてようやく一息つける」という見方を示した。
また、台湾では国光生物科技(ADImmune)、国家衛生研究院、国防部軍医局の3機関でH1N1型インフルエンザのワクチン製造が可能で、3カ月以内に20万本の量産が可能だと語り、住民に安心するよう呼び掛けた。ワクチンは医療関係者や空港・税関の検疫担当者などに優先的に配布する方針だ。
SARS当時、観光業に最悪の影響
現在、新型インフルエンザが台湾に上陸した場合、どの程度の経済的影響が出るのかが懸念されている。
29日付自由時報のまとめによると、新型肺炎SARSが広がった2003年第2四半期、民間消費成長率は過去最悪のマイナス2.51%に落ち込み、経済全体の足を引っ張った。民間投資も第1四半期の5.82%成長から6.54%減少へと急落。輸出成長率は第1四半期の10.87%から3.69%に、輸入成長率は11.01%から1.73%に落ち込んだ。
業界別では観光産業への打撃が最も深刻だった。台北市立和平病院で集団感染が起き、SARS被害がピークだった4月、台湾を訪れた観光客は前年同期比で54.98%減少。5月の減少率は83.5%に達した。第2四半期通期で減少した観光客は延べ52万3,000人に上った。
また、第2四半期の成長率がマイナス10.35%を記録した建設業、およびサービス業も打撃が大きかった反面、製造業は比較的影響が軽微だった。
SARSが去った下半期、台湾経済は順調な回復を遂げたが、この理由について行政院経済建設委員会(経建会)は、「生産能力に被害が出なかったためだ。成長を支える資本、労働力、技術はSARS襲来でも何ら変化がもたらされることはなかった」と指摘した。