高雄市は7日、7月16日から26日まで同市で開催される第8回ワールドゲームズ(五輪で採用されていない競技の国際大会)の期間中、大気汚染の低減を目指し、重大な汚染源と見なされる企業に対し稼働停止の勧告を行ったことを明らかにした。しかし、対象となる鉄鋼、電力、セメントなどの重大産業が10日以上停止することになり、業界からは台湾経済に深刻な影響を及ぼすと反発の声が相次いでいる。8日付経済日報などが報じた。
ワールドゲームズ開幕に向け準備が進められるメインスタジアムは、17日に落成式が行われる。7日夜は花火の打ち上げテストが行われた(7日=中央社)
高雄市政府は、昨年開催された北京五輪で、同市周辺数百キロメートル内の工場などが一斉に稼働を停止したことを引き合いに出し、「当市も工業都市のイメージを払拭(ふっしょく)し、きれいな空気で世界からの来訪者を迎えたい」という考えを示した。
鉄鋼業では最大手の中国鋼鉄(CSC)の3号高炉で、年次保守を終えての稼働再開を大会終了後まで待つよう求めるほか、海光企業、唐栄鉄工廠、協勝発鋼鉄、龍慶鋼鉄などを停止勧告の重点対象とするもようだ。
セメント業では、台湾水泥(台湾セメント)および東南水泥の高雄工場に協力を呼び掛けている。 同市は、台湾電力(台電)大林発電所および南部発電所に対しても運転の停止を求めるほか、7月1日から電力業者に対する汚染ガス排出量基準を厳しくする予定で、硫黄酸化物濃度は従来の200ppm以下から120ppm以下に引き下げられる。これに違反すれば10万~100万台湾元(約30万~300万円)の罰金が科されることになるという。
また建設業者に対しては期間中、掘削作業の全面停止を要求、同市観光保護局の係員が工事現場を監視することになる。さらに高雄港でも中島商港区(第1コンテナターミナル)バラ積み貨物用埠頭(ふとう)の使用停止を求める。
名誉のために産業を犠牲?
同計画について観光保護局の担当者は7日、「対象の企業はいずれも協力に前向きな姿勢を示している」と話した。しかし、同計画についての協議の中で高雄市側は「協力しなければ毎日罰金を科すことになる」と表明したとされ、勧告対象となった企業からは「頭に銃を突きつけられて『ノー』と言えるはずがない」と批判の声が上がっている。
同計画に対しては、高雄港務局も「要求対象の埠頭は基幹物資の積み替え拠点で、停止すれば台湾経済に深刻な影響を与える」と批判しており、台電も発電所を止めれば深刻な電力不足に陥ると示唆した。
また、ある鉄鋼業者は「少し前まで経済部が『無給休暇を実施するな』と言っていたのに今度は高雄市が『稼働を停止しろ』と言ってきた」と不満をもらした。
経済日報は、ワールドゲームズ開催は高雄市民にとって名誉なこととした上で、「名誉のために企業を犠牲にすることで観光業界にもたらされる経済効果は約10億元とみられるが、重大産業の稼働停止によって受ける損失はこれを大きく上回る」と指摘し、高雄市の方針に疑問を投げ掛けた。
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