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作成日:2009年5月13日_記事番号:T00015306
ハーバード大の「蒋介石伝」、新たな歴史評価に注目

米ハーバード大学が4月に出版した蒋介石伝「The Generalissimo: Chiang Kai-shek and the Struggle for Modern China(蒋介石総統、現代中国のための奮闘)」が、蒋介石元総統に新たな歴史的評価を与えるものとして話題を呼んでいる。
この蒋介石伝は、同大フェアバンク東アジア研究センター研究員、陶涵(Jay Taylor)氏が、蒋介石の日記を中心に、中国や日本、米国、ロシアなどの歴史資料を読み解き、執筆した700ページに上る大作。
著者の陶氏自身、執筆前は大多数の西洋人と同じく、蒋介石に対して汚職や独裁などマイナスイメージを抱いており、唯一評価していた点は、蒋介石が個人として清廉だったことだというから面白い。
陶氏は、蒋介石が女性の権益を守り、国を愛し、帝国主義を嫌ったことを挙げ、「台湾の現代化の基礎を築いた人物であり、今日(こんにち)の中国は、毛沢東ではなく蒋介石の主張した方向に発展している」と主張。
蒋介石自身は人間的な魅力に欠け、仲間に好かれなかったものの、意思が強く勇気があり清廉だったことから、大衆に広く受け入れられた。ユーモアに乏しく、かんしゃく持ちだったが、敬虔(けいけん)なキリスト教徒で、決して冷酷非道な人間ではなかったことが日記から読み取れるという。
「もしわたしが死ぬまで独裁者だったとしたら、他の独裁者同様、草木のように朽ちるだけだ。しかし、もし民主政府のための堅固な基礎を構築したとしたら、わたしはすべての中国人の中で永遠に生き続けるだろう」という蒋介石の言葉は印象的だ。
本書では、晩年の蒋介石が1972年7月、突然心臓発作を起こし、73年1月まで約半年間もこん睡状態だったこと、それが国民に知らされていなかったことなども明らかにしている。
ワシントン・ポストやエコノミストなどが高く評価し、多数の大学教授が推薦しているこの蒋介石伝、台湾や中国での評価が気になるところだ。