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「低価格でハイセンス」、消費の主流に


ニュース 商業・サービス 作成日:2007年7月16日_記事番号:T00001542

「低価格でハイセンス」、消費の主流に

 
 高所得層と低所得層に二極化するM字型社会への移行が指摘される中、「低価格かつハイセンス」の商品・サービスが人気を集めている。消費にあまりお金はかけられないが、高級感も楽しみたい消費者層が増えているためで、こうした層をターゲットにした飲食店などのビジネスが好調だ。16日付中国時報が報じた。

王品が路線転換

 王品台塑牛排(ステーキ)、和風料理の陶板屋などを展開する王品連鎖餐飲集団はこの5月、台北市南京東路二段にトンカツ料理店「品田牧場」を開店した。内装は1,000万台湾元以上をかけた豪華な作りながら、セットメニューの価格は290元と190元の2種類のみで、低価格で高級感を味わえることがセールスポイントだ。お客には好評で、満員で列に並ばなければならない日も少なくないという。

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間接照明で高級感漂う品田牧場の店内。店員の服装や接客態度もまるでホテルのよう。満員のお客が昼食に舌鼓を打っていた (16日=YSN)

 王品集団はこれまで中上級クラスの消費者層を顧客ターゲットとしてきたが、戴勝益董事長は「M字型社会への移行で、低価格飲食店のビジネスチャンスが大きくなった。今後はこの市場の開拓に力を入れる」と語る。品田牧場は年内に少なくともあと6店オープンさせ、5年以内に総店舗数30店を目指す。

薄利は多売が必須
 
 今年1月に台中市にオープンした赤鬼牛排館も、品田牧場と同様のコンセプトで人気を博している店だ。内装に3,000万元をかけながらトンカツは1食わずか120元で、平日1,300人、休日は1,700人ものお客が訪れ、月間の売上高は800万元にも上っている。

 「低価格は利益が薄いため、集客数で勝負しなければならない」と、創業者の張世仁氏は語る。「開業前に計算したところ、1日800人以上のお客が来てようやく利益が出ることが分かった」といい、回転率を上げるため装飾は燃えるような赤色にした。赤は食欲を上げる効果があり、早く食べて早く帰ることが期待できるという。

女性服飾品や旅行業界も
 
 若いOL向けファッションで、「低価格でエレガント」路線で成功している代表格は「依洛」(iROO)だ。百貨店とほぼ同様のアイテムを約半額で買えることが人気で、顧客の平均消費額6,000元で3~4件が買える。百貨店であれば1~2件だ。また、店舗も広めにしてあり、高級感を与える。開業8年で平均25%成長しており、今年上半期も30%の成長を記録した。

 旅行業界でも、手頃な価格で高級感のある「高級民宿」が流行している。台中県新社郷の「天籟園」は、高級感のある欧州の城郭風の立派な建築ながら、2人一部屋で2,000元程度だ。最初の年は宿泊率が1割に満たず、売上高も100万元にもならなかったが、ここ2年は低価格ブームの脚光を浴び、宿泊率平均7割、休日は満室状態になった。売上高は通年400万~500万に伸びた。
 
「美的感覚追及」が一般化
 
 こうした消費者の傾向について、東呉大学社会系の劉維公副教授は、「単なる低価格の追及ではなく、消費者が消費に美的感覚を求めることが一般的になったため」と分析する。スウェーデンの家具量販店IKEAや、スペインの服飾ブランドZARAの成功は、同じ文脈で語れるという。
 
 所得レベルで中低層の増加傾向は今後も続くとみられ、「低価格でハイセンス」はこれからの消費の主流となりそうだ。移り変わりが激しい消費者の嗜好(しこう)をいかにつかみ、高級感をより多く演出していけるかどうかが起業家たちにとって大きな課題だと中国時報は結んでいる。