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作成日:2009年6月11日_記事番号:T00015882
台湾を大地震から救う、実証された台風の効果

中央研究院科学研究所兼任副研究員、劉啓清氏の国際研究チームが、このほど英国の科学雑誌「ネイチャー」に発表した論文で、毎年台湾に襲来し、大きな被害をもたらす台風が、実は大地震の発生を減らす「救世主」だったことが明らかにされた。これまで別々の自然現象とみなされてきた台風と地震に、相関関係があったと実証されたのは初めてのことだ。
研究によると、フィリピン海プレートとユーラシアプレートが接する台湾東部で、地下200~270メートルの位置に地質活動の感知器を設置し、両プレートの活動状況を観察したところ、低周波地震などの持続時間が長いゆるやかな「微弱地震」が、5年間で20回観測された。そのうち11回はちょうど台風と同時期に発生しており、他の9回よりも震度が強く、地震の波形も複雑だった。
共同研究者である米国カーネギー研究所の地質学者アラン・リンデ氏によると、台風がこれらの「微弱地震」を誘発したことは明白。たまたま同時に発生した可能性はほとんどないという。
劉氏によると、台風は大気だけでなく、活断層の表面の圧力をも低下させるので、活断層の上方のプレートがわずかに上昇し、それによって内部に蓄積されていたエネルギーがこまめに解き放たれ、大地震の発生を抑えることになるという。
日本西南部の南海トラフ(水深4,000メートルの海底にある活発で大規模な活断層)も、ちょうどフィリピン海プレートがユーラシアプレートに接する場所にあり、この地域では100~150年ごとにマグニチュード8クラスの巨大地震が発生している。
しかし、両プレートが接触する速度は、南海トラフでは年間4センチと台湾東部での半分にすぎない。理論上は台湾のほうが大地震の発生率が高くなるはずだが、実際には逆だ。このことからも、台風が大地震の発生を防ぐのに一役買っているのは明らか。被害ばかり強調される台風も、今回ばかりは汚名返上だ。