誠品書店といえば、台湾全土に50店舗以上をチェーン展開する大手書店。その台南店で、本の間にオレンジ色のビラが挟まれているのが発見されたのは4月30日のことだった。
その後、台中中友店、桃園中レキそごう店(レキはつちへんに歴)、台北台大店および敦南店でも同じビラが次々と発見され、その数は計70枚を超えた。発見された日は、メーデー(5月1日)と端午節(5月28日)の連休に特に集中していた。
この精巧なビラは、誠品書店のロゴマークが印刷されており、一見すると同書店が製作したかのよう。しかし、内容はなんと本の万引き方法を図入りで詳しく紹介したもので、悪質ないたずらにほかならない。
この「万引きの勧め」によると、万引きをする際にはキョロキョロせず、小型カッターまたは爪(つめ)で書籍のビニールカバーを引き裂き、書籍に付けられている盗難防止用のICタグを探し出して取り外す。これで、書店入り口の検知器を恐れずに、堂々と書籍を盗み出せるという。
さらには、ICタグは床に放り捨て、それを踏んだ人が靴の底に付けたまま検知器を通過し、感知されて騒いでいる間に逃走するとよい、という悪知恵まで紹介。
万引き指南のビラをばらまいた犯人は不明だが、書店の防犯システムに詳しい者であることは間違いない。同業者か内部の者の犯行も疑われているようだ。消費者に対してどのように書籍を盗むかを教える行為は、刑法第153条の教唆に当たる罪だ。
今年創立20周年を迎えた誠品書店にとっても、台湾の書店史上でも初めての事件だが、幸い誠品書店では万引きの被害率は上がっていないという。
誠品書店は消費者がゆっくり座って本を読むことにも寛容だ。今回のようないたずらを受けても、本に親しんでもらう姿勢を変えることはないと表明した(18日=中央社)