台湾積体電路製造(TSMC)の張忠謀董事長は18日、「今年の投資支出を昨年と同水準まで引き上げる」と表明した。当初計画の15億米ドルから18億米ドルへ、20%増額される見通しだ。同社は第2四半期に入り設備機器への投資を積極化しており、同期累計の設備購入費は100億台湾元(約292億円)を超えている。先進製造プロセスへの投資を加速し、景気回復後の商機に備えて業界をリードしたい考えだ。19日付経済日報などが報じた。
CEO復帰を果たした張董事長は、社員や顧客との距離を縮めようと、従業員と同じピンクのシャツに黒い制服といういでたちでフォーラムに登場した(18日=中央社)
半導体景気は波状回復
張董事長は同日、同社主催のフォーラム「2009年台積技術論壇」に出席し、「米国経済は早ければ第3四半期に底を打ち、第4四半期には回復する。世界全体の景気回復は2010年になる」との見通しを語った。半導体産業に関しては、「緩慢なL字回復となるが、一直線に回復が進むのではなく、波状形を描く」との認識だ。
張董事長はTSMCの今後の方針について、「先進プロセスの開発に向けて努力するべきで、今年は研究開発(R&D)費を昨年より増やす」と強調した。また開発の方向性については「半導体の集積密度は18~24カ月で倍増する」というムーアの法則実現を追求するほか、現在の主流プロセスの応用拡大も重視する考えだ。
張董事長の考えを反映するように、陳俊聖世界セールス・マーケティング副総経理もこの日、「R&D人員を、先進プロセス部門で30%、設計部門で15%増やす」と表明した。また、主流プロセスの応用拡大については電源管理ICを重視する考えだ。さらに今年、ベルギーのルーヴェン市に新たなR&D拠点を設けるとの計画も明らかにした。
このほか昨年末に着工した新竹の第4期12インチウエハー工場については、40ナノメートル、28ナノ、22ナノを主力とする方針を示した。同工場はサッカー場8面分の規模のクリーンルームを擁し、TSMCのR&Dセンターも兼ねる。12インチウエハー投入枚数換算で年産168万枚の生産能力を備え、既に従業員が業務に取り組んでいる。
最新プロセスで問題発生か
一方で19日付電子時報では、TSMCの最新40ナノプロセスが25%という低い歩留まり率にとどまり、主要顧客のAMDで、初めて同プロセスを導入したグラフィックチップ新製品「ATI Radeon HD 4770」の出荷が遅れ、深刻な供給不足となっているとのニュースが伝えられた。
AMDは張董事長に対し不満を表明し、価格設定の見直しを求めているとされ、TSMC側も受注をつなぎ止めるため応じる方針とされる。この問題ではFab 12工場の担当者が異動の処分を受けたが、TSMCは報道について「個別の顧客情報については答えられない」とコメントしている。
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