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雲林県麦寮はマスクが必須、ナフサプラントで深刻な大気汚染


ニュース 社会 作成日:2009年6月29日_記事番号:T00016253

雲林県麦寮はマスクが必須、ナフサプラントで深刻な大気汚染

 
 台湾中部、雲林県麦寮郷にある麦寮国民小学(小学校)海豊分校の児童は、いつでもマスクを用意している。「鼻をつまみ、口を押さえ、マスクをする」という反応パターンがすっかり身に付いてしまったのは、同校が台塑集団(台湾プラスチックグループ)の「第6ナフサ分解プラント(通称六軽)」からわずか3キロの至近距離に位置するためだ。

 麦寮郷では、六軽から排出される揮発性有機化合物(VOCs)の影響で、周辺地域住民の発がん率が上昇したことが明らかになったが、同校は経済部工業局が発表した健康ハイリスク上位5校のうちの1校。週のうち3日は「プラスチックが焼けるような異臭」が漂い、頭がクラクラしたり、昼食を食べられなくなる児童も多いという。

 同校では今年、異臭がひどかった4月13日午前および午後、6月4日、6月9日の4回、測定のために台プラへ気体サンプルを送ったが、VOCsが検出されたのはそのうち1回だけだった。

 同県台西郷の新興国民小学は、六軽が全教室にエアコンを完備し、電気代を支払っている唯一の学校だ。過去、1カ月に17回も環境保護局に異臭を訴えたが、環境保護局の巡回記録には「異臭なし」の文字が並ぶばかり。

 林進郎・雲林県浅海養殖協会理事長は、「鼻をつくような異臭がしても、測定結果は正常だという。じゃあ、あの異臭は全部うそだとでも?」と憤る。麦寮郷や台西郷では、六軽の発表する測定結果を信じる住民はいないという。

 六軽から排出されるVOCsは数百種類に上るが、台プラが測定するのはこのうちわずか47種。「正常」という結果が出るのはそのためらしい。

 そもそも、台プラが異臭を測定すること自体、選手が審判を兼任しているのと同じでおかしなことだ。本来ならば第三者が公正に測定すべきではないか。

 2001年から現在に至るまで、六軽周辺地域の住民が通報した大気汚染違反は約380件。そのうち台プラが罰金を科されたのは63件のみ。罰金率が16%と低いのは、雲林県政府が手加減しているせいだろう。

 同県のような特に資源のない地方政府が、六軽による経済利益と地域社会への還元を優先するのは仕方のないことかもしれない。とはいえ、健康が犠牲になっている住民にとっては、悲劇以外の何物でもない。