エルピーダメモリが力晶半導体(PSC)に派遣していた董事1人を引き揚げたことが明らかになり、長年の提携関係に異変が起きたのではないかという観測が持ち上がっている。エルピーダには、台湾記憶体公司(TMC)や茂徳科技(プロモス・テクノロジーズ)との関係強化を目指すという憶測もあり、事実であればエルピーダとの関係を最大の強みとしてきた力晶にとって大きな打撃で、今後汎用型DRAMからニッチメモリやファウンドリー事業に軸足を移すという見方すら出ている。
力晶は1994年、三菱電機、兼松、力捷電脳(UMAXコンピューター)の3社による出資で設立されており、三菱電機が03年にDRAM事業をエルピーダに譲渡した後は、台湾DRAM業界でエルピーダの唯一の提携企業の地位にあった。
30日電子時報によると、エルピーダと力晶の不和が表面化したのは、台湾DRAM業界の再編構想をめぐってで、エルピーダが陣営の統合計画に茂徳科技(プロモス・テクノロジーズ)を参加させることを主張した一方、力晶は強く反対した。このためエルピーダは最終的に、力晶と計画した統合案、プロモスと計画した統合案の異なる2種類の案を経済部に提出せざるを得なかったという。
エルピーダには現在、新たにプロモスにもDRAMの受託製造を請負わせるという観測が出ている。また、TMCの技術パートナーへの選定が決まっているエルピーダは、台湾で関連ビジネスを発展させられる見通しがあるため、あえて力晶1社に義理立てする必要もないという見方もある。
力晶は否定、「関係は不変」
力晶の譚仲民副総経理は29日、「エルピーダとの関係に変化はない」と関係悪化説を強く否定した。譚副総経理によれば、エルピーダによる董事引き揚げは、日台両地が離れているため、力晶が昨年開催した15回の董事会でエルピーダの董事が出席したのは2回と出席率が低かったこと、および力晶側からは役員を派遣しておらず、関係が対等でなかったことにエルピーダが配慮した結果だという。なお、エルピーダの力晶に対する持ち株比率は0.02%に過ぎない。
レックスチップが最後の持ち駒
力晶は26日の株主総会で、総額1億5,800万米ドルの海外社債償還問題で、焦点となっていた転換社債の株式転換価格の再設定の承認を受けたばかりだが、30日付工商時報は、「力晶の持ち駒は減る一方で、最後のよりどころは瑞晶電子(レックスチップ・エレクトロニクス)の持ち株のみだ」と論評した。
レックスチップは06年11月の設立で、中部科学工業園区(中科)に12インチウエハー工場を有しており、全生産を業界最先端の65ナノメートル製造プロセスで行っていて、月産能力は月8万枚だ。
設立当初はエルピーダと力晶の48.8%ずつの折半出資だったが、力晶が経営悪化を受けて持ち株の一部をエルピーダに売却し、エルピーダは今年3月に出資比率を52%として子会社化していた。力晶は依然、42.8%の出資比率を保っており、有力な資産ではある。
しかし、これすらエルピーダにさらに売却を進めるという観測が出ている。その場合、力晶は汎用DRAM業から、ニッチメモリなどに軸足を移して、DRAM業界の市場地図が新たに書き換えられることも予想されるという。
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