中台間のチャーター便による直航が実現して4日で1年になる。交通部民用航空局によると、今年6月30日までに直航便の運航は計4,008便、利用者は159万7,000人に上り、年間延べ500万人といわれる中台間の往来者数の約3分の1が利用した計算になる。一方、同時に開放された中国人観光客の訪台は36万人にとどまり、馬英九総統の選挙公約だった「年間100万人」を期待していた旅行業界から不満の声が相次いでいる。3日付蘋果日報などが報じた。
直航実現で中国との往来は飛躍的に便利になった。しかし価格面では依然不満が多い(昨年杭州空港に到着した中華航空の直航第1便・中央社)
直航チャーター便の利用状況は、週末限定だった昨年7月4日から12月14日までは運航本数859便、利用者33万6,000人で、平均搭乗率は85.3%だった。平日運航実現後の昨年12月15日から今年6月30日までは3,149便が運航され、126万1,000人が利用。平均搭乗率は台湾の航空会社で81.5%、中国の航空会社で75.3%、両者の平均で80.2%だった。
また、貨物の直航チャーター便は、昨年12月15日のスタートから6月30日までの間に177便が運航され、2万632トンの貨物を輸送した。
一方、直航の影響で台湾~香港・マカオは利用客が減少。キャセイパシフィック航空は6月、1週間当たりの運航本数を88便と従来の108便から約2割削減した。中華航空(チャイナエアライン)と長栄航空(エバーエア)も、8月末に予定される直航チャーター便の定期便への格上げ後、香港路線の減便を検討している。
海峡中間線の開放、台湾は否定的
直航チャーター便は、定期便化に伴い1週当たり270便に運航本数が拡大する。
これについて中国国務院台湾事務弁公室の王毅主任は2日、立法院財政委員会の訪中団に対し「1週当たり700~800便に再拡大すべきだ。また、中国北方空域の混雑への対応策として、現在は飛行禁止空域と取り決めている台湾海峡中間線を開放することが望ましい」と提案した。
台湾と同規模の人の往来がある日本と韓国は毎週800便を中国路線に就航させているため、台湾との直航便も同等の水準が望ましいという。
王主任の発言に対し李龍文・民航局長は、「単に週間700~800便に拡大するという交渉ならば当然歓迎する」と発言。しかし、海峡中間線の開放については劉徳勲行政院大陸委員会副主任委員が、「飛行ルートは安全保障に影響しないことが最重要条件だ」と語り、否定的な見解を示した。仮に中間線が開放された場合、中国の戦闘機はアモイから6分間で台湾に飛来できるという。
旅行業者、利益計上は少数
開放1年目の中国人観光客の来台者数は、延べ36万4,792人、1日平均では延べ1,013人となった。馬総統の公約「1日3,000人、年間100万人」は、大きく下回る結果となった。
ある旅行業者は「中国人観光客を取り扱う旅行代理店100社余りのうち、利益が出ているのは少数で、中国側の旅行社から支払いを得られず負債が積み上がってしまったところが多い」と打ち明ける。中国の旅行社は団体客を送り込んでも直ちに料金を払わず、先延ばしにするところが多いという。
今年1台約600万台湾元(約1,750万円)をかけて新しい観光バス50台を導入した台湾観光巴士の徐浩源董事長は、「中国人観光客は多いときと少ないときの落差が激し過ぎる。少ないときは観光バス40台、2億元相当が駐車場で野ざらしになる」と不満だ。
このほか、中国人観光客は消費力が期待していたほどではなかったという声も、飲食店や土産物業者から相次いでいる。
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