書籍などのデータをディスプレイ機器にダウンロードして楽しめる電子ブック(電子書籍)市場で、商機獲得に向けた動きが活発化している。主要部品の電子ペーパーでは、友達光電(AUO)が第3四半期中に量産、発売にこぎ着ける構え。最大手の元太科技工業(PVI)は既に年末まで受注が満杯となっている。市場調査会社アイサプライ(iSuppli)によると、電子ブックリーダーの世界市場は、昨年の103万台から2012年に1,830万台へと急速な普及が進む見通しで、関連メーカーは大きな期待を寄せている。10日付工商時報が報じた。
AUOの陳来助総経理は電子ブック市場について、「ハードのみならず、ビジネスモデル、規格や技術などすべてが整備されていない状態で、まだ始まったばかりの段階にあるため、今後急速な成長が見込める」と指摘。その上で、省エネルギーとタッチパネルの2つの機能が普及の上で鍵となると指摘した。
AUOは今年3月、米国の電子ペーパーメーカー、シピックス・イメージング(SiPix Imaging)の株式31.58%を取得した。シピックスの電気泳動型ディスプレイ技術を利用し、AUOがパネルモジュールを組み立て、明基友達集団の佳世達科技(Qisda)が電子ブックリーダーを受託製造するとみられる。
PVIも6月、川上の米国・材料メーカー、イーインクを買収して垂直統合を進めている。PVIは、第2.5世代生産ラインはすべて電子ペーパーのバックプレーン基板に充てており、フル稼働だと表明した。さらに、昨年買収した韓国BOEハイディスの3世代ラインで電子ペーパーを量産しており、第3四半期に3.5世代ラインも量産に入る見通しだという。
このほか、華碩電脳(ASUS)、中華映管(CPT)も電子ブックリーダーを量産すると宣言している。
「キンドル2」、17%値下げ
米インターネット通販最大手のアマゾン・ドット・コムは8日、同社の電子ブックリーダー「アマゾン・キンドル2」を17%値下げし、299米ドルとすると発表した。ソニーのハイエンド機種、PRS-700と比べると50米ドルも安い。米NPDグループのアナリストは、「300米ドルを割り込んだ意味は大きい」と、普及に貢献すると指摘した。
両社の販売実績は公表されていないが、シティグループの予測によると、キンドルは昨年50万台、ソニーは今年3月までで40万台となっている。
市場規模、5年で8倍以上に
行政院は今週、台湾の電子ブック市場を2013年時点で1,000億台湾元(約2,800億円)規模へと、昨年の120億元から8.3倍以上拡大させる方針を打ち出した。
さらに9日には、電子ブックやオンライン上での出版などデジタルコンテンツを含む、サービス7産業を推進する「サービス業発展計画」が閣議決定され、同産業を後押しする姿勢が鮮明になっている。
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