中台間で締結を目指す「両岸経済協力枠組み協議(ECFA)」による台湾域内産業への衝撃を緩和するため、経済部は20日、300億台湾元(約860億円)規模の「貿易自由化対応のための産業構造調整基金」を立ち上げる計画を発表した。影響が大きいとみられる業界に対し、減税措置の延長や貿易面での救済措置、融資などを行っていく考えだ。21日付経済日報などが報じた。
経済部はECFA広報役の漫画キャラクターを発表した。台南の製造メーカー営業員「一哥(イーグー)」と新竹の貿易会社管理職の客家女性「発嫂(ファーサオ)」が対話形式でECFAを分かりやすく解説するとしている(20日=中央社)
経済部では、ECFAで中国との貿易自由化が進むことで▽タオル▽寝具▽靴下▽下着▽セーター▽製靴──など紡織業界を中心に特に大きな影響が出るとみている。また、▽既製服▽水着▽家電▽かばん類──にも一定の影響が出ると予想している。
同部の試算によると、ECFAで影響を受ける域内企業数はこれらの業界の3,469社、就業人口10万5,458人、生産額は年間973億5,300万元に上る。このため、未登記企業も含めて各業界への協力を行う方針だ。同基金の計画は今週中に経済部工業局から経済部に報告され、決定される。
また、経済部技術処も年度の技術移転指導経費から1億元を拠出して、第4四半期から来年末にかけて企業に対する技術指導や人材育成、産業調査、マーケティングなどへの協力を行う。
初の閣僚級会合
尹啓銘経済部長は22日、シンガポールで行われるアジア太平洋経済協力会議(APEC)通商閣僚会議に出席する。この場で中国の陳徳銘商務部長とECFAに関する非公式協議を行い、アーリーハーベスト(一部品目の早期関税引き下げ)の原則方針や、今後の実務協議の日程について話し合う。ECFAに関して初の閣僚級会合であり、経済部では順調に行けば10月に実務協議に着手できるとみている。
民進党は住民投票の署名提出
ECFAによって中国との統合が深まると警戒する野党民進党は20日、ECFA締結の是非を問う住民投票の実施を求めてこの2週間で集めた署名15万件を中央選挙委員会に提出した。同党は行政院公投審議委員会の審査通過の後、次回は100万人を目標に署名を集める方針だ。蔡英文主席は「馬英九政権はECFAが台湾に与えるマイナス面を一切説明しておらず、中国との協議はあらゆる施策の中で透明度が最低だ」と語り、民意を問わないままに政府がECFA締結を進めることを改めて批判した。
これに対し?振中経済部次長は同日、「ECFAは一貫して民意の監督を受けており、住民投票は社会的リソースの無駄遣いだ」と述べ、住民投票は必要ないという考えを表明した。?次長はまた、ECFAに対する支持が6~7割に上ったという経済誌「遠見」のアンケート調査を示しつつ、一般市民の理解は得られていると指摘した。
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