経済部は21日、今後3カ月以内にDRAM各社から産業再生計画の提出を受け付け、審査を経て1~2社に対し最大300億台湾元(約858億円)の政府出資を行う「DRAM産業再生プラン」を発表した。同プランでは、政府主導で設立が予定されるTMC(Taiwan Memory Company)も計画の提出を求められている。出資対象となる企業は遅くとも来年1月には発表される見通しだが、経済部が昨年11月にDRAM業界の再編・統合の意思を明らかにしてから、実質的な進展がない中で改めて作業方針が打ち出されたことに対し、業界や台湾メディアからは対応の遅さに厳しい批判が出ている。22日付中国時報などが報じた。
実質TMCと台プラの争い
「DRAM産業再生プラン」では、▽海外パートナーからの無償での技術移転▽海外パートナーと同レベルの研究開発(R&D)▽海外パートナーとの共同での研究開発(R&D)計画立案、および台湾人材の育成▽台湾DRAM産業の再編を目指す──という4項目の条件に合えば、いずれの企業も申請可能としている。これを受けて力晶半導体(PSC)は「できるだけ早く計画を提出する」とコメント。台塑集団(台湾プラスチックグループ)傘下の南亜科技と華亜科技(イノテラ・メモリーズ)も「すべての業者に公平な対応が約束されるなら、われわれも参加する」との意向を示した。
ただ中国時報は、財務状況が悪化している力晶と茂徳科技(プロモス・テクノロジーズ)は、銀行融資の返済延期に際し既に政府に協力を仰いでいるため出資を受ける資格はなく、今後3カ月で4条件を満たせるのは、実質上TMCと台プラの2陣営だけだと指摘。その上で、経済部は最終的にTMCを通じて力晶、プロモス、華邦電子(ウィンボンド・エレクトロニクス)の統合を目指す考えだとの見方を示した。台プラ2社については、合理的な計画を示すことができれば出資を獲得する可能性はあるとしている。
一方、同日付経済日報は、最近ウィンボンドが積極的に台プラ陣営と接触しているとの観測を伝え、同陣営がウィンボンドを合併することで「台湾DRAM産業の再編を目指す」という条件を満たし、政府出資獲得を目指す方針ではないかと指摘した。
TMCは9月に設立
再生プランではTMCも計画の提出を求められているため、業界からは「TMCを通じた政府の業界統合構想は破綻した」との見方も出ている。
これに対し黄重球経済部次長は21日、「政府は必ずTMCに投資する」と反論し、「TMCは産業再生の使命を背負っており、将来的には同社を通じて既存のDRAM6社が1、2陣営に統合される」という認識を示した。また、TMCは9月設立に向け順調に準備が進められていると強調した。
「政府は時機を失した」
DRAM業界再編が現時点で全く進んでいないことに対しある業界関係者は、「昨年末、DRAM価格が過去最低にまで落ち込み、各社が存続の危機に直面した時が業界再編の最も良い時期だった」と指摘した。その上で、DRAM価格が回復に向かい、TMCの技術パートナーに決定したエルピーダメモリが日本政府からの公的支援を受けることが決まった今、台湾政府は既に業界再編のチャンスを失ったとして、「主管機関の長(尹啓銘経済部長)に最大の責任がある」と批判した。さらに、台湾メーカーは統合が実現しなければサムスン電子に全く対抗できないと、業界が置かれた窮状を訴えた。