経済部は29日午後5時半より、中台間で締結を目指す両岸経済協力枠組み協議(ECFA)の台湾域内産業に対する影響の評価報告を発表するが、「経済成長率を1.83ポイント押し上げ、就業人口が20万人増える」というプラス面を強調したものになると予想されている。しかし同日付自由時報によると、報告の作成に当たった中華経済研究院(中経院)は当初まとめで「打撃を受ける域内産業の就業人口は恩恵を受ける産業の2倍以上」「電子・電子産業の生産額が1割減少する」などマイナス面を明確に指摘していたことが分かった。同紙は、ECFA締結が本当に台湾の利益になるのか、経済部は説明責任を果たすべきだと呼び掛けた。
自由時報が報じた中経院の評価報告によると、ECFA締結で恩恵を受ける石油化学、自動車などの産業の就業人口は73万6,188人で、打撃を受ける電機・電子、家具などの産業は166万7,311人と2.26倍の開きがある。
経済部は今月20日、ECFA締結で影響を受ける域内産業の就業人口は10万5,458人という試算を発表したが、同紙は「中経院の報告と差が大き過ぎて、経済部が不都合なデータをねじ曲げたのではないかと疑わせる」と指摘した。その上で、中経院の分析が正しければ、既に深刻な失業問題がさらに悪化すると訴えた。
生産額9.3%減
中経院は米パーデュ大学によって創設された多国間貿易自由化の分析手法の「GTAP(Global Trade Analysis Project)を使ってECFAの影響について分析を行った。その結果、「中台間の貿易自由化後、台湾産業の全体的生産量と輸出量は拡大するものの、競争力の弱い産業にはマイナスの影響が加わる」として、▽電機・電子▽青果・果物▽その他運輸機器▽木材製品──などを具体的な産業として挙げた。特に電機・電子産業は生産額が9.3%、108億米ドル以上減少するという。この理由について中経院は、ECFA締結によって中国は台湾から、▽化学・プラスチック製品▽ゴム製品▽機械▽紡織▽石油・石炭製品▽鉄鋼──などの輸入需要が大幅に拡大するため、電機・電子産業の生産リソースがこれらの産業に流れてしまうためと指摘した。
業界団体は予測を疑問視
台湾の代表産業である電機・電子産業に大きな影響が及ぶのであればまさに深刻な問題だが、業界団体は実際にそうなるかどうは現段階では分からない、と慎重な見方だ。
台湾区電機電子工業同業協会の羅懐家総幹事は、「電機、家電は従来内需産業で規模の経済が不十分だった。東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国の自由貿易協定(FTA)で台湾製品が不利になったとしても、(ECFAは)市場拡大のメリットをもたらす」と述べ、中経院の予測に疑問を示した。
同協会の鄭富雄副理事長は、「電機と電子を一緒に見るべきではない。悪影響が出る場合、電機のほうがより大きいはずだ」と語った。
対中輸出依存度が1割上昇
中経院はまた、ECFA締結後、対中輸出が増加する一方、ASEANプラス3(中国、日本、韓国)のFTAの影響で日本やASEAN主要4カ国への輸出シェアは落ち、▽肉製品▽その他食品▽紡織▽アパレル▽金属製品──などの産業は、中国に対する輸出依存度が一挙に10%以上高まると分析した。
このため自由時報は、「台湾の輸出戦略はグローバル化との連携ではないのか。中国とひたすら結び付こうという姿勢は国家利益に合致しているのか」として、経済部はECFAについてマイナス面を含めて明確に台湾住民に説明し、是非を問うべきと指摘した。
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