新型インフルエンザ(H1N1)感染者の台湾で初となる死亡例が確認された。行政院衛生署疾病管制局の30日夜の発表によると、死亡したのは台北県の39歳の男性で、肝臓と腎臓に病歴があった。この1週間、台湾本土と離島では新型インフルの集団感染が5件確認されており、感染は拡大傾向にある。葉金川衛生署長は31日、集団感染の再発防止を最重視する考えを示した上で、治療薬は十分確保できているとして市民に冷静な対応を呼び掛けた。31日付蘋果日報などが報じた。
今年5月に台北県中和市の幼稚園で感染者が出た際に消毒作業を学校などを行う係員。今後、集団休校などの措置がとられるケースも増える可能性がある(中央社)
感染者、週平均で1300人増加
葉衛生署長はまた、新型インフルの早期発見のため、8月15日から耳鼻咽頭科や小児科など一般の診療所で検査や治療薬の投与を行えるようにすると語った。疾病管制局の予測によると、感染者数は現在週平均1,300人の勢いで増えている。現在は世界保健機関(WHO)に倣い、統計を取っていないが、7月19日時点では93人だった。
30日は生徒や児童を中心に全土で少なくとも23人の感染が確認された。重症と判断された患者も既に5例となった。このうち既に回復して退院したのは、集団感染が発生した高雄市の教会のセミナー合宿に参加した男子中学生(15)に接触して重症になった6歳の男児のみだ。
学校や軍隊、集団感染目立つ
新型インフル流行当初の5~6月には海外渡航者の感染が大部分だったが、最近は学校や軍隊などでの集団感染が目立って増えている。
今月25日に台北で開催されたアジア医学生会議では、台湾および海外からの参加者のうち64人にインフルの症状が見られ、検査対象となった52人中12人で感染が確認された。また、雲林県虎尾鎮の私立の中高一貫校、永年高級中学で30日、中学生51人が新型インフルの症状を訴え、検査を行った10人中10人に感染が確認され、夏期補習10日の休校措置が採られた。このほか、南部の学校や工場、離島に配属されている軍隊でも、それぞれ数人から数百人がインフルの症状を訴え、検査対象の一部で感染が確認されている。
ワクチン接種は11月から
劉兆玄行政院長は、予想より2カ月早い9月に爆発的な流行が起こる恐れがあると語り、ワクチンや治療薬の確保など対応を急ぐ方針を示した。
疾病管制局は、10月末には国光生物科技(アディミューン)からワクチン500万本の納入を受けて、11月から住民に対するワクチン接種を始められる見通しで、さらにワクチン500万本の追加確保に積極的に動いていると説明した。治療薬はリレンザが97万人分、タミフルが220万人分に加え、その他薬品の備蓄もあり、台湾の人口15%に当たる345万人分をカバーできるとしている。
なお、中央社の報道によると、タイでは感染者が8,877例、死亡者は65例に上り、1週間前と比べ、感染者が2,101例、死亡者が21例も急増した。
台湾域内観光にも打撃か
中華民国旅行業品質保障協会の洪天慶・国民旅遊組委員は、2003年の新型肺炎(SARS)まん延の影響を例に挙げ、集団感染の広がりが観光業界に打撃となる恐れが大きいという予測を語った。現時点では、不況と新型インフル流行で海外旅行が控えられる代わりに台湾域内旅行が選ばれるため、域内観光産業の業績は悪くないものの、今後新型インフルが拡大した場合、影響は避けられないという見方だ。
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