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作成日:2009年8月11日_記事番号:T00017157
知本のホテル倒壊、オーナーの心もバラバラに

台湾中南部に記録的な雨量をもたらした台風8号(アジア名、モーラコット)。中でも被害の凄まじさを表す象徴的な出来事として繰り返し報道されているのが、台東県・知本温泉風景区のホテル、金帥飯店の倒壊シーンだ。創業者の謝見成さんは、テレビの前で目にしたその瞬間が、50年以上の人生で最もつらかったと語る。
謝さんが知本温泉風景区に地上6階、地下2階の金帥飯店を建てたのは22年前のこと。土地の買い取りから建物の建築まですべて自らの手で行い、入念に経営してきた。建物は地震にも揺るがないほど強固だったという。「生涯をかけて築き上げたものが、一夜にしてなくなった」と無念を思いだ。被害額は数億台湾元に上るとも言われている。
知本温泉区では、大型リゾートホテルの富野温泉休閒会館をはじめ、多くのホテルが知本渓沿いに建ち並ぶことから、今後さらなる影響の拡大懸念されている。地元観光産業への打撃は避けられないだろう。
ただ、倒壊した金帥飯店の対岸には、野次馬が次々と押しかけ、付近の道路は数キロメートルにわたって渋滞しているとか。春節(旧正月)シーズンよりも人出は多く、ドリンクやソーセージを売る屋台まで出現。倒壊したホテルをバックに記念撮影をする人も多く、新たな観光スポットとなっているのは何とも皮肉な話である。