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水害対応の遅れ、馬総統の評価急落


ニュース 社会 作成日:2009年8月14日_記事番号:T00017274

水害対応の遅れ、馬総統の評価急落

 
 台風8号(アジア名・モーラコット)の水害被害で、被災者の救助活動の遅れなど緩慢な対応で馬英九総統の評価が急落している。馬政権のリーダーシップ不足で初期対応が遅れ、それによって被害が拡大した「人災」の側面に、国民党寄りのメディアからも厳しい批判が相次いでいる。台北市長在任中の2001年9月、同市に深刻な被害をもたらした台風16号、03年の新型肺炎SARSと、非常事態への対応が常に批判されてきた馬総統だが、危機管理能力はまったく向上していないようだ。
 
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雲林県で水害対応の際に事故死した村長の弔問に訪れた馬総統。14日にようやく被害対策の国家安全会議を開催したが、かえって後手ぶりを印象づけた(13日=中央社)
  
 最も批判を受けているのは、被災者の救助の遅れだ。土石流で300人以上が犠牲になったとみられている高雄県甲仙郷小林村は、高雄県旗山鎮の避難所に収容された村民が11日、村に取り残された被災者を救助するヘリコプターが少な過ぎると不満を爆発させ、警察官らと衝突する事件があった。中央災害応変中心によると、前日の10日までにヘリコプターで救助された被災者は台湾全土合計でわずか281人だった。

 軍が馬総統と劉兆玄行政院長の指示によって、北部の兵員4,000人の被災地への増派を決めたのは12日で、13日になってヘリコプターによる1日当たりの救助者数が1,610人と初めて1,000人を超え、救助活動はようやく本格化した。14日付中国時報は初期の災害救助が進まなかった理由に指揮系統の混乱を挙げており、リーダーシップが働かなかったことは明らかだ。しかし、災害では発生から72時間を過ぎると被災者の生存率が一気に低下することは常識で、初動が非常に重要だ。果たしてこうした認識が馬政権にあったのか疑わしい。

被災者に責任押し付け
 
 馬総統は12日、英ITNテレビの「台風への備えは万全だったか」という質問に対し、「台湾南部はこれほどの災害は経験したことがなかった。住民に備えができていたらいち早く避難していただろうが、彼らは自分たちの住む所を死守した」と答えた。被害に遭った原因は住民の自覚不足と取れる発言で、インターネットなどで集中的に批判されている。

 馬総統のこうした言動は、10年前の台湾中部大地震の際の李登輝総統(当時)のリーダーシップと比較して批判されている。当時、総統府秘書長の要職にあった黄昆輝・台湾団結聯盟(台聯)主席によると、李元総統は、午前1時47分に発生した地震で、午前9時50分には湯曜明・国軍参謀総長、黄秘書長を伴って被災地の南投県に入り、次々に指示を下した。軍に直接命令したため、行政組織を飛び越えて迅速な人命救助や物資の支援、復興作業が行われた。香港大手紙、明報はこのことと比較して「馬総統は自分が三軍の総帥であることを忘れているのではないか」と皮肉った。

「外国の援助は断れ」、外交部が噴飯指示
 
 台湾政府が日米からの支援申し出を断ったと報じられた問題で、王郁琦・総統府報道官は13日「拒絶したことなどない」と報道を否定した。

 しかし14日、外交部が11日付で海外の大使館や代表事務所などの機関に対し、「駐在国の政府や民間が物資の提供や救援団体の派遣を申し出ても謝絶すること」と指示する公文を送付していたスキャンダルが明らかになった。蘇俊賓行政院報道官は「ひどいミス」と認めるとともに、即刻撤回を指示したことを明らかにした。

 外交部が内政部消防署に必要な救援物資に関する問い合わせをしたところ、「ない」と回答を受けたためこの公文が送られたということだが、馬政権の危機意識の足りなさを端的に表しているようだ。

被災地アンケート、過半数が「不満」
 
 国民党寄りのケーブルテレビ局、TVBSが12日行ったアンケート調査でも、馬総統の台風被害への対応には47%が「不満」と回答し、「満足」の26%を大幅に上回った。特に被災地の雲林・嘉義・台南地区では51%、高雄・屏東地区でも51%が「不満」で、被災地でより不満の割合が高くなった。

 一部のメディアは、05年にニューオーリンズなど米国のメキシコ湾岸地域に壊滅的な被害をもたらしたハリケーン、カトリーナへの被害対応でブッシュ前政権が評価を下げ、それが民主党への政権交代につながったとして、馬総統も今回の対応次第では、再選を狙う12年の総統選挙の行方も怪しくなると書き立てている。