16日付中国時報によると、台風8号(アジア名・モーラコット)の被災者支援のため米軍が台南空軍基地に届けた防水シート120束が、いったんは現地に送られたものの、中央災害応変中心による手配の不手際で、再び基地に戻されて保管されていたことが分かった。水害対応のまずさを謝罪し、ようやく国家安全会議を招集して第一線で指揮に当たるかに見えた馬英九総統だが、総統府によると、救援活動の指揮と執行は今後も既存の行政体系で行うという。最高指導者が求められる役割を果たさないことが救援活動の混乱を長引かせている面は否めず、一連の問題発言もあって馬総統への不満はさらに強まっている。
台南基地に到着した米軍輸送機。海外支援拒否問題について欧鴻鍊外交部長は「自分を含め責任を追及する」と表明した(16日=中央社)
米支援受け入れ、「なぜ8日もかかる」
16日午後2時40分、防水シート120束を積み、沖縄の普天間基地から飛来した米空軍のC-130J輸送機が台南空軍基地に着陸した。米軍の台湾上陸は1979年の米台断交以来初めてで、台風被害に対する人道支援のための特例措置だ。しかし、積み荷は台湾側に引き渡された後、救援活動の拠点となっている高雄県旗山鎮に送られたが、中央災害応変中心が具体的な対応を指示せず、軍に保管を求めたため、そのまま台南基地にUターンすることになったという。急いで海外から届けられた救援物資は、指揮系統の混乱によって被災者の元に送られる時間が空費された。
また、外交部が日米などの支援を断るよう指示を行ったことで米軍支援の到着がずれ込んだため、被災者からは「(米軍到着に)うれしいよりも悲しい気持ちのほうが強い。どうして支援受け入れに8日もかかるのか」と不満の声が上がった。
「担当者に責任取らせる」
水害対応の不手際がやり玉に挙がっている馬総統は15日、視察先の南投県水里郷で「われわれはもっとうまくやれた。申し訳ない」と初めて公式に謝罪を行った。
しかし16日、米CNNのインタビューで「わたしがすべての責任を負う」と答えたものの、「責任を負うという意味は」と突っ込まれると「救災活動全体を検査し、改善するだけでなく担当者の処分も行う」と語り、自身に対する処分は何ら考えていないことを明らかにした。
また人命救助のタイムリミットとされる災害発生から72時間に救助活動が進まなかったことについて、災害発生後3日間は豪雨の影響があったと説明した上で、「15日は1日で2,518人を救出した。これは記録的なこと」と自賛し、被災者の心情を逆なでした。
馬総統のこうした不見識な言動に対し、インターネットでは「辞めて責任を取れ」「数百人の犠牲者の生命には、死んで謝ったとしてもまだ足りない」など非難の声が渦巻いている。CNNが「台湾の指導者は責任を取って辞任すべきか」というアンケート調査を実施したところ、回答者7,319人の76%が「辞任すべき」と回答した。
国家安全会議、既に効果なし
なお、馬総統は災害発生後7日目の14日にようやく国家安全会議を開いたことに対し、行政のチェック機関である監察院の委員からは、「既に機を逸しており、効果はなかった」「発生2日目に召集すべきだった。メディアに災害情報があふれ、総統と行政院長への不満が相次いでから動き出すのでは遅すぎる」という批判が出た。
監察院に対し中国時報は、「今回の災害対応について調査する際、まず馬総統に対し、当初の72時間に軍部からどのような報告を受け、どのような指示を与えたかについて詳細な説明を聞くべき」と指摘し、責任の所在を明らかにするよう求めた。
中央災害応変中心の公式統計によると、台風8号による人命などの被害は、17日午後1時現在、死者126人、行方不明者60人、けが人45人となった。