スマートフォン市場でいよいよ価格競争が始まる。中国の通信機器大手、華為技術や鴻海科技集団(フォックスコン)傘下の富士康国際(FIH)が、グーグルのモバイルプラットフォーム「アンドロイド」搭載の低価格製品の投入を準備しており、宏達国際電子(HTC)と、来年第1四半期に初の製品を発売する宏碁(エイサー)が最も大きな影響を受けると観測されている。24日付工商時報が報じた。
業界の観測によると、華為が第4四半期に発売を予定しているスマートフォンは、オファー価格がわずか130~150ユーロ(約1万7,600~2万300円)と、現在市場に出ているアンドロイド機より4~5割低いものの、ハード規格はHTCやサムスン電子が今年上半期に発売したアンドロイド機と近いという。
富士康もハード規格が「HTCマジック」と近いアンドロイド機を、ディスプレイサイズ3.5インチでオファー価格約200ユーロ、2.8インチで約140ユーロの水準を予定している。同社の発売時期は未定だ。
また、欧州の大手通信キャリア、T-モバイルも10月より、華為製造のスマートフォン「Pulse」を約250ユーロで発売する。最新のアンドロイド2.0採用で、3.5インチ静電容量式タッチパネルに、ブルートゥース、WiFi、320万画素のデジタルカメラなどの機能を備え、ハード面では「HTCマジック」と遜色ない。
アンドロイドのスマートフォンで低価格化が進むのは、アンドロイドが無償OS(基本ソフト)であることが大きな理由だ。
なお、HTCは発売から約1年がたった「G1」が349ユーロ、「マジック」の台湾での販売価格がユーロ換算で444ユーロ、サムスンは同社初のアンドロイド機「ギャラクシー」が約400ユーロとなっており、華為などの低価格戦略は強みを発揮しそうだ。
ブランド力の向上が課題
HTCは今年下半期から来年にかけて発売する新製品の6~7割がアンドロイド機で、まさに低価格化が進む市場に挑むことになる。同社は欧州で一定の知名度を獲得しているが、ノキアがブランド力によって製品価格がライバルメーカーより高くても競争力を保っている事実に照らせば、HTCは当面、ブランド力向上に最も力を入れるべきと工商時報は指摘している。
なお、同紙によると、HTCは今後発売する中低価格機の数機種が、ハード規格では華為、富士康の製品よりやや劣っており、デザイン面でも富士康を上回れていない。しかし、同社はオファー価格を十分引き下げておらず、顧客の反応が注目されるという。
予想以上の低価格化が進行?
エイサーはスマートフォン市場の戦略について、ノートパソコンに倣い「低価格、低粗利益路線」を標榜している。しかし、来年の発売時点で、アンドロイド機市場はエイサーが追い付けないほど低価格化が進んでいる可能性がある。また、エイサーが低価格化を希望しても、受託製造メーカーの意向に沿わない恐れもある。
エイサーはPC業界では最上級の評価を受けているが、携帯業界では実績がなく、この点も課題といえる。
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