行政院は25日、燃料価格の上昇による影響を緩和するため、台湾中油がバス会社に対し、軽油1リットル当たり3台湾元、タクシー業者に対し、ガソリン1リットル当たり2元の割引販売を行うと発表し、即日実施した。この措置に対し、タクシー業者からは「補助が少なすぎる」、市民からは「交通業者のみに対する補助は不公平」などといった不満の声が上がっている。変動価格制を導入した以上、石油製品価格の国際原油相場上昇に伴う高騰は避けられないが、変動価格制そのものへの不信感も広がっている。
優遇措置は、バス会社の場合、昨年7月から今年6月までの月平均給油量、タクシーの場合、毎月550リットル(1,100元)を上限とする。
バス会社に対する優遇措置は、台湾中油の軽油価格が23.6元まで値下がりするか、バス会社が運賃を値上げした時点で終了する。
タクシーに対する優遇措置は、台湾中油のオクタン価95無鉛ガソリン価格が27.8元まで値下がりした時点で終了する。バス、タクシー合計で、台湾中油の補助支出は1カ月当たり1億6,900万元に上る。なお、補助を受けた業者は料金の値上げは認められず、値上げした場合、補助を取り消される。
タクシー業者値上げ撤回の意思なし
26日付自由時報によると、この措置を受けて、8月の値上げを計画していた各バス業者は、値上げを見送ることを決めた。一方、補助上限を1,100元とされたことについて、タクシー業者組合である全国計程車公会全聯会は、「民間のタクシーは1カ月当たり少なくとも800リットルのガソリンを使う。補助上限は880リットルであるべきで少なすぎる」と不満を表明。現在利用料金の引き上げを申請している、台北市と台南市のタクシー業者は、申請を撤回しない意向だ。
「選挙の票目当ての政策」
政府の補助措置について、台湾各紙は、「石油製品価格の上昇で、あらゆる民生物資が高騰している。特定の業者に補助金を回すのであれば、石油製品価格の安定化のために使うべき」「値上げしたい業者には値上げさせ、利用するかどうかは消費者に選択させるべき」などといった市民の声を紹介しており、批判的な意見が目立つ。
26日付中国時報は、「政府は『公共交通機関の利用促進』を補助実施の理由として挙げているが、選挙の票稼ぎが目的の実にあけすけな政策で、一般庶民にとっては大してメリットがない」と酷評した。
タクシーについては、「果たして公共交通機関だろうか?」と疑問を投げかけ、「一定水準の収入がある者か、特別な必要がある時に利用するのが一般的で、利用者負担の市場原則に任せるべきだ。台湾中油からの補助は政府による補助に等しく、政府は果たして弱者の味方なのか、それとも金持ちの味方なのか?」と問いかけた。
台湾大学経済系の林向愷教授は、「補助金は問題の解決にならず、問題は石油製品価格それ自体にある。変動価格制には誰もが疑問を持っており、台湾中油は価格決定方式を公開して、外部のチェックを受けるべきだ」と語る。
こうした批判について陳瑞隆経済部長は、変動価格制には利用者負担の原則や、エネルギー節約などプラス面が多いと基本的には評価しつつ、「運用方法は修正を検討する必要があり、各方面の意見を聞きたい」と率直に述べている。変動価格制は昨年10月に導入され、経済部はこれまで29回価格の調整を行った。多くの消費者がまだ慣れていないため、石油製品価格および物価の上昇で、新制度が必要以上に悪者にされている面もありそうだ。