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ECFA・中台協議、ダライ・ラマ訪台で影響か


ニュース 政治 作成日:2009年9月1日_記事番号:T00017635

ECFA・中台協議、ダライ・ラマ訪台で影響か

 
 チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世の訪台に対し、中国側が高官や国有企業トップの訪台を中止し、抗議姿勢を強めている。中国側は、台湾側の対応次第では両岸経済協力枠組み協議(ECFA)の締結や次回の窓口機関によるトップ会談(江陳会)など、中台交流の重要項目にも影響が出ると警告している。ただ、本心では関係悪化は望んでおらず、馬英九政権から好ましい姿勢を引き出して今回の問題の影響を最小限に抑えたい考えとみられる。1日付経済日報などが報じた。
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ダライ・ラマは31日、台風で400人以上が犠牲になった高雄県小林村で法要を行った。台湾政府の高官らに会う考えはないと改めて表明した(31日=中央社)

 中国側は、中国人民銀行の蘇寧副行長をリーダーとして31日に訪台するはずだった中国金融学会代表団がスケージュールを延期。2日の済南(山東省)発桃園行きの直航定期便第1便に搭乗して訪台を計画していた張建国・済南市長も予定を取りやめた。一行は9月に訪台する中国高官の訪問団としては最大の100人規模で、台北市の円山大飯店の70室の予約も、双方の旅行業者による交流会もすべてキャンセルとなった。

 また、6日に台中~アモイ(福建省)に貨客船を就航させる中国遠洋運輸集団(COSCO)は、台中で行われる予定だった記念式典の取り消しと魏家福総裁の訪台中止を台中港務局に伝えた。

本音は影響の抑制

 中台間の経済関係では現在、ECFA締結が最大の課題となっている。しかし、国務院台湾事務弁公室(国台弁)の李亜飛主任助理は31日、ダライ・ラマ訪台によるECFAへの影響について「それがまさに大陸(中国)が事態の推移を見守っている理由だ」と話し、影響を受けることもあり得るという立場を明確に示した。

 また、同日付工商時報によると、台湾との交渉に当たる北京の関係者は「第4回江陳会が予定通り開催できるかも保証できない」と発言したという。

 中国側の一連の措置や発言からは、「分裂主義者」と位置付けるダライ・ラマへの馬政権の対応によっては、中台関係を一挙に冷却化させることも辞さないという姿勢がうかがえる。ただ、李国台弁主任助理は「両岸は経済関係の正常化をできる限り早く実現しなければならない」とも語っており、本心では関係悪化を望んでいないことは明らかだ。このため、中国は受け入れ不可能なラインを明示して馬政権に誠意ある対応を求め、馬政権がそれに応えることによってダライ・ラマ訪台の影響を最小限に押しとどめ、今後同様の事態が起きることを防ぎたい意図があるとみられる。

 この点において中国が注目しているのは、ダライ・ラマの残りの台湾滞在期間中に馬総統が「偶然」会わないか、または馬総統に近い人物や政権を代表するような人物が会わないか、そうした場合に海外メディアによって国際社会に広く報道されるような事態が起きないかどうかだ。

「台湾人の反感招く」=中国時報

 経済日報は今回の事態から、▽中台関係は依然ぜい弱であること▽中国経済の恩恵を受けたければ、中国がタブー視する領域に踏み込むべきではないこと──の2点の教訓が得られたとしている。

 一方、同日付中国時報は、ダライ・ラマが台湾政府の意向の下、海外メディアも交えた記者会見を中止し、総統府、行政院、国民党の首脳らも会わない意向を示していることが既に中国側への善意の回答になっていると指摘。ダライ・ラマが台風8号(アジア名・モーラコット)の被災者の法要で訪台したことに理解を示さず、中台間の交流や経済協力の取り消しなどを行うのであれば、過去1年余りにわたって築いてきた相互の信頼関係を損ない、台湾住民の反感を招くとして、中国側に度量のある対応を求めた。