台北地裁は11日、総統府機密費の不正流用などの罪で起訴された陳水扁前総統(58)に対し、無期懲役と罰金2億台湾元(約5億6,000万円)、公民権終身はく奪の判決を言い渡した。判決は「改革を掲げながら、総統の職位を乱用し私腹を肥やした」と陳前総統を厳しく断罪した。
一審判決が言い渡された後、陳前総統が収監されている台北看守所前で、前総統の釈放を求め座り込む支持者(中央社)
また、資金の流れを指揮したとされる呉淑珍夫人(57)に無期懲役と罰金3億元、公民権終身はく奪、海外でのマネーロンダリング(資金洗浄)で中心的な役割を果たしたとされる長男の陳致中氏に懲役2年6月、側近の馬永成・前総統府副秘書長に懲役20年など、共犯にも厳しい判決が下された。陳ファミリーに科せられた罰金は8億元に達した。
陳前総統は昨年まで2期8年の任期中に機密費約1億元を不正流用したほか、新竹科学工業園区龍潭園区の開発に絡み、5億元を超える不正な資金授受があったなどとして、昨年11月に最高検察署に逮捕され、12月に夫人らとともに起訴されていた。陳前総統は判決公判への出廷を拒否した。
野党民進党や台湾独立派勢力は馬英九政権による政治的圧力が存在したと主張しており、政局の不安定要因となるのは必至だ。民進党の蔡英文主席は「懲罰的な判決だ。(今回の判決と)馬英九総統の台北市長時代の特別費不正流用疑惑は同じ裁判官が裁いているが、片や無期懲役、片や無罪というのでは、社会は受け入れられない」と批判した。
陳前総統側の鄭文龍弁護士は「判決は陳前総統一家を『皆殺し』にするようなものだ。証拠がない報復判決で、国民党による強権政治の始まりだ」などと強く非難し、控訴する意向を示した。
一方、検察当局は一審判決を受け、判決文をスイスの司法当局に送り、現地で資金洗浄が疑われ、凍結されている2,100万ドルを台湾に送金するよう求める方針だ。