2013年完成予定の台北ドーム建設計画(台北市松山たばこ工場跡)に暗雲が立ち込めてきた。BOT(建設・運営・譲渡)方式で開発権を得た遠雄企業集団(ファーグローリー)は23日、監察院から是正要求を受けた問題で、入札規定に違反していないと猛反発。一方、郝龍斌台北市長は、遠雄集団が要求を受け入れないのであれば、契約の解除もあり得ると応じた。両者の紛糾が長引いたり、業者の再選定を行う事態となれば、計画に遅れが生じることは確実とみられる。24日付工商時報などが報じた。
趙董事長は、台北ドーム計画は既に18年が経過しても着工にさえ至っていないと指摘し、「公共建設は今後絶対に請け負いたくない」と失望感を語った(23日=中央社)
遠雄集団の趙藤雄董事長は23日、提携パートナーをスポーツスタジアム設計で世界最大規模の「HOK S+V+E」へと、競争入札前に予定していた竹中工務店から変更したことについて、台北ドームの入札規定に違反していないと強調。監察院はこれについて今月10日、公共建設民間参入促進法に違反しており、台北市政府との再契約が必要だとして、黄煌雄監察委員が同市などに是正要求を行っていた。しかし趙董事長は、「是正要求には納得できない」と表明した。同社は22日、台湾大手各紙に大々的に釈明広告も掲載した。
趙董事長はまた、黄監察委員が是正要求を出した10日は、台北ドームに関する第4回都市設計審議委員会、第3回環境影響評価に対する審査のちょうど前日に当たり、あたかも背後で操っている人物がいるかのようだと疑問を呈した。その上で、04年に台北市の企業選定審査委員会によって、遠雄主導の「台北巨蛋企業聯盟」が最優秀事業申請者として選定された後、市政府との契約前日に経営理念が合わないという理由で同陣営から離脱した劉培森建築士が黒幕だと名指しした。
さらに、もし台北市政府が契約解除に踏み切るならば、遠雄は損害賠償を求めると表明した。
代替案も浮上
郝台北市長は、監察院の指摘どおりに契約条文計39項目について遠雄側に修正を求める考えに変わりはなく、契約解除の可能性は遠雄の対応次第だと強調した。
なお、既に一部の台北市議員からは、建設地の変更や、14年に計画がある大台北地区(台北県市、基隆市)の大型直轄市昇格以後まで見合わせるべきなどの声が上がっている。
黄監察委員は同日、本件は住民の陳情を受けて着手したものだと、趙董事長が指摘した黒幕疑惑を否定した。その上で、遠雄の投資計画は、落札当時と既に内容が変わっており、提携パートナーを変更するだけでなく、投資計画書を再提出しなければならないと強調した。劉培森建築士は、黒幕説は全くのデマであり、法的手段に訴える可能性もあるとコメントした。
台湾のBOT案件は最近、順調に進まない事例が相次いで明るみになっている。最大案件の台湾高速鉄路(高鉄)は、累積赤字により政府が経営を主導することが決まったばかり。高雄都市交通システム(MRT)も業績不振で、高雄市が接収するよう市議会議長から提案が出された。