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ベテラン観光バス運転手、32人の命を救い転落死


ニュース 社会 作成日:2009年9月28日_記事番号:T00018178

ベテラン観光バス運転手、32人の命を救い転落死

 
 恒春遊覧集団傘下のバス会社、高都遊覧車客運(高雄市)のバス運転手、侯文田さん(54)は27日、地元コミュニティの日帰り温泉旅行で、妻で車掌役の呉鎂錬さんと31人の乗客を乗せ、高雄から南投県国姓郷の玉門関山荘へと向かっていた。

 バスが南投県の山間部に入ってから、侯さんはブレーキが利いたり利かなかったりする異常に気付いた。減速して運転を続けたが、危険この上ない。そこで、土砂崩れ防止用にコンクリートで固められた山の斜面にバスをすり付けて、やっと停止させたのが午前11時ごろだった。

 右側の2つのドアが開かなくなっていたので、侯さんは非常ドアを開け、乗客全員を下車させた。その際、乗客には「安全第一だから」と声を掛けて、理解を求めた。目的地の玉門関山荘までは、わずか200メートルほどの地点だった。

 ところが、乗客がバスを離れて5分もたたないうちに、バスはごう音をたててビンロウの林の中に横転。実は、交通の妨げになることを懸念した侯さんが、バスを下方の大型駐車場へ移動させようと再び発車させたところ、ブレーキが利かなくなって坂道を疾走し、谷へ転落したのだ。侯さんは、消防隊が駆け付けて約1時間後に救出されたが、既に帰らぬ人となっていた。

 目の前で夫が死亡した妻の呉さんはその場で泣き崩れた。乗客の多くは侯さんとは10年以上の付き合いがある旧知の地元民。「侯さんが31人の命を救ってくれた!」と命の恩人を悼んだ。

 警察の調べによると、事故原因はブレーキ故障。しかし、バス会社によると、このバスは車齢9年の欧州系高級車で、先月車検を受けたばかり。残されたGPRS衛星データによると、バスは事故当時時速4~5キロメートルだったと見られることから、現場の道路がゆるみ、タイヤがはまったのが原因ではないかとの見方だ。

 侯さんは勤務歴10年以上、違反記録もないベテラン運転手。妻の呉さんとは夫婦仲もよく、最近初孫ができたばかりだったという。