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国民生活指標の公表中止、主計処が政治判断で隠ぺいか


ニュース その他分野 作成日:2007年8月1日_記事番号:T00001860

国民生活指標の公表中止、主計処が政治判断で隠ぺいか

 
 行政院主計処が「国民生活指標」の定例公表の突然の中止を決めた。同指標は「経済安定」「家庭生活」「仕事生活」など9項目から成り、これまで毎年8月に発表してきたが、1日付工商時報は、数値の悪さに閉口した主計処が、来年の総統選挙で与党・民進党への悪影響を避ける目的で隠ぺいしたと批判している。これまでにも都合の悪い数字は隠したり、統計手法を変えてごまかす「前科」があったということで、統計のあり方そのものにも疑問を投げかけている。 
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 国民生活指標の各項目は、例えば「経済安定」であれば、域内総生産額(GNP)、消費者物価、5分位階級別(全世帯を5等分)所得格差、失業率、平均失業週数の5つの細目の数値から総合値を算出する。同指数は2001年を100とした場合、91年の106.97ポイントから漸減し、02年、03年と2年連続で100ポイントを下回った。04年はやや回復して100.31ポイントに戻した。

 「仕事生活」は、勤労層の所得の伸びの停滞・下落によって94年以前の101ポイントから05年は99.2ポイントに下落。9項目のうち、「公共安全」「環境」「社会参加」「文化レジャー」「学習生活」は向上しているものの、各界が最も注視する「経済安定」「仕事生活」「家庭生活」は下落する一方だ。

 許璋瑤主計処長は今年突然公表を中止した理由について、「各項目にどういう細目を含めるかは学界でも意見が分かれている。このような総合指数を見るよりは、個別の指標を見た方が実際の状況をより把握できるため」と説明している。政治的判断がはたらいているのではないかという質問に対しては、「絶対そんなことはない」と強く否定した。

世論への影響、常に懸念 

 主計処の統計内容と発表のあり方に疑問が持たれたのは、00年第4四半期に消費者信用調査の発表を中止してからだ。当時主計処は発表中止の理由について、「消費者心理は政治の影響を受けやすいため」と説明。しかし工商時報は、「今の時点から見れば、調査結果を隠さずに公表して下落の原因を究明していれば、翌年経済成長率が過去50年間で初のマイナスになる事態は避けられたかもしれない」と指摘している。

 01年には10分位階級別の「家庭収支調査」で、最も所得の高い層が最も低い層の61倍になったという数値がメディアで報じられた結果、03年からの新統計では従来の「分配された所得」が「支配可能な所得」に改められ、所得格差は10倍以下に低下した。工商時報はこれについても、「賢い手段でメディアに報道されることを防ぎ、与党に反省させる機会を逸した」と批判している。

 また、以前は毎週2回発表されていた「重要国情統計」が、05年には週1回になり、さらに06年10月からは「不定期発表」に改められた。「不定期」は「発表しない」に等しく、政府にとり自己検討の機会がさらに少なくなったようだ。

 一方で、台湾の統計制度を国際標準に合わせるべきという批判は以前からあるが、これは改められる気配がない。なぜなら、いったん国際標準を導入すると政府の債務が大幅に増えてしまうからだ。

 こうした、統計数値が世論に与える影響を常に気にしてきたこれまでの経緯から、工商時報は今回の国民生活指標の公表中止について、「政治と無関係だなどという話を誰が信じるだろうか」と結んでいる。